理研CDB「解体的出直し」 名称変更、規模半減 研究員の雇用は維持
「STAP細胞」論文研究不正問題で、理研は再発防止のためのアクションプランを発表した。理研CDBは規模を半減し、名称を変更する。
「STAP細胞」論文研究不正問題で、理化学研究所は8月27日、再発防止のためのアクションプランを発表した。小保方晴子氏が所属する理研CDB(発生・再生科学総合研究センター)の解体などを求めた改革委員会の提言書を受けて策定されたもので、CDBの名称を変更し、現在40ある研究室を約半数に縮減するなど組織を刷新する。改革委が求めていた理事の交代は行わない。
都内で記者会見した野依良治理事長は、「研究不正は絶対にあってはならない。アクションプランは、対応できる項目からただちに実行する」と意気込みを述べた。
名称は「多細胞システム形成研究センター」(仮称)に
アクションプランでは、(1)CDBの「解体的な出直し」、(2)理研のガバナンスの強化、(3)研究不正防止策の強化、(4)第三者によるアクションプランのモニタリング――を約束した。
CDBの名称は「多細胞システム形成研究センター」(仮称)に変更。5つの研究プログラムのうち2つは廃止し、1つはほかのセンターに移管する。これにより、40ある研究室は約半数に減るが、移管などによって250人の研究者の雇用は維持する。
竹市雅俊CDBセンター長は辞任。外国人研究者を含む委員会を新設し、新センター長を世界中から公募・スカウトして選ぶ。CDBの運営主体だった「GD会議」は廃し、外部の有識者を含む「運営会議」で運営を行う。
改革委はCDB解体を求めていたが、縮小・改名にとどめた。野依理事長は「改革委が求めていたのは、長年固定化されていた旧来の運営体制を廃し、研究体制を再構築することと、250人の研究員の雇用を維持すること。解体してなくしてしまうのではなく、CDBを中心にした新しい科学の潮流をどう作るかが大事だろう」と意図を説明した。
外部有識者による「経営戦略会議」でガバナンス強化
ガバナンス強化のため、外部有識者で過半数を構成する「経営戦略会議」を設置するほか、研究不正防止対策などを講じる理事長直轄の「研究コンプライアンス本部」を新設。研究内容の広報についても、ほかの研究と比較する場合は科学的事実として正確かを研究者が確認するなど体制を見直す。
研究倫理教育の徹底や、“コピペ”防止のための論文類似検索ツールの導入、実験データ最低保存期間(発表後5年)の設定などにより、研究不正の防止策を強化する。研究者の採用過程も見直し、選考過程の記録や採用手順の文書化などを行う。新任の研究室主催者には複数のメンターを配置するなど、経験の浅い若手も活躍できるよう配慮する。
これらの取り組みをチェックするため、外部有識者からなる「運営・改革モニタリング委員会」を設置するほか、文部科学大臣からも評価も受け、適宜、取り組みを見直す。
理事長・理事は留任 「なくてはならない人材」
野依氏は引き続き理事長として改革の実行に当たる。トップが責任を取るべきとの意見もあるが、「理事長として陣頭指揮を取るの責務」とし、辞任の考えはないという。
改革委は研究担当理事とコンプライアンス担当理事の交代を求めていたが、2人とも「改革を推進するためになくてはならない人材」(野依氏)として留任させる。残り3人の理事も「たいへん有能な人で、よくやってくれている」(同)とし、引き続き職務を全うしてもらう。
野依氏は、「国をまたいだ共同研究が増えており、撤回されたNatureの論文も4機関・15人の共著だった。そこにどういう仕組みを導入すれば、研究不正が防止できるかは難しい問題」と指摘。「倫理教育を徹底し、科学に対して誠実であるという思いを培っていく必要があるのではないか」と述べ、理研内部だけでなく大学や外部の研究機関などと連携しながら、不正防止に努めていきたいと話した。
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