プログラミング必修「コードアカデミー高校」が開校1年 “教室”はネット上、メンターは現役エンジニア
プログラミングを必修科目とする日本初の通信制高校「コードアカデミー高校」が開校から1年を迎えた。一般科目の学びにいかに技術を取り入れるかが今後の課題という。
プログラミングを必修科目とした日本初の広域通信制・単位制課程普通高校「コードアカデミー高等学校」が開校から1年を迎えた。Google+を活用した情報共有、ハングアウトで行う始業式やホームルームなど、クラウド学習の方法も試行錯誤を続けている。
同校は学校法人・信学会(長野市)が運営。卒業に必要な74単位のうち、約20単位をプログラミング関連が占めるカリキュラムが特色だ。
まず日本語でプログラミングできる学習用言語「Sunaba」で考え方の基礎を学び、JavaScriptやSwift、C言語やJavaなどをプロジェクトを通じて実践的に学んでいく。職業エンジニアの輩出ではなく、テクノロジーへの理解や思考力、問題解決力を身につける方法としてのコーディング技術の習得を主軸としている。
副校長を務めるITジャーナリストの松村太郎さんは「『ニコ厨』『ハッカー』などさまざまな言葉があるすが、ネットや技術に強い興味がある人に、思いっきりそればかりやっていいですよ、という環境を作るとどうなるか。既存の学校教育にはなかなかなじめなかったとしても、好きなものへの熱意を持って技術を磨けば大きな武器になる」と同校のコンセプトを話す。
クラウド上に「教室」を
添削課題を提出するだけでなく、「Google Apps for Education」を全面導入し、クラウドを活用してオンラインでコミュニケーションするのも特徴だ。
全員が参加するGoogle+上でクラスメイトとフリートークし、イベント機能とカレンダーを使って課題の締め切りを管理。実際に対面できるわけではないが「教室」としてコミュニティーを作っている。年に2度、長野県上田市の本校で1週間程度、実際に集まって授業を行うスクーリングを実施し、「Raspberry Pi」を使ったフィジカルコンピューティングなどにも親しむ。
生徒だけでなく、副校長の松村さんもカリフォルニア在住だ。時差はありつつもGoogleハングアウトで始業式やホームルームに“出席”し、生徒と交流している。
カリキュラム監修を務めるメルカリのエンジニア大庭慎一郎さんをはじめ、現役のエンジニアが「メンター」としてプログラミング学習をサポートするなど、企業との提携にも力を入れる。サービスや商品を教材とした学習プログラム作りにも取り組んでおり、今後パブリックドメインのような形で教育機関や家庭向けにノウハウを広げていければ――と構想を掲げる。
将来は「Ingressが体育の単位」に?
開校から1年が経ち、今の課題は「残りの50単位をどれだけデジタルに寄せられるか」。決められた指導要領を守りつつ、教科学習にもプログラミングやインターネット、スマートフォンをさらに活用していきたいという。「例えばInstagramで美術を学び、Ingressが地理と体育の単位になる――そんな風になったら学ぶのはもっと楽しくないですか?」(松村さん)。
4月と9月に入学を受け入れており、初年度の生徒数は10人超。4月には新入生を迎え、50人程度になるのではという。東京、神奈川、千葉、埼玉の首都圏4都県と長野の在住者が入学対象となる。
信学会の栗林聖樹 次世代教育開発部長は「注目が高まっている手応えはあるが、特に急いで生徒数を増やしたいという気持ちはない。設立5年目ごろに定員(1学年80人)になれば」という姿勢だ。松村副校長も「まずはこの教育形態で学ぶ子たちにどんな可能性があるか、1人1人のチャンスを見極めているフェーズ。活躍する人をそれぞれにサポートいけるよう考えていきたい」と話している。
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