金星探査機「あかつき」軌道投入ラストチャンスへ 7月中に3回軌道修正 「すごく緊張している」(2/2 ページ)
金星探査機「あかつき」が12月、金星周回軌道投入のラストチャンスに挑む。7月に3回に分けて軌道修正を行う計画。失敗できない挑戦に「緊張している」と中村正人プロジェクトマネージャは話す。
1回目の軌道修正は7月17日、2回目は24日、3回目は31日に行う計画。3回合計で、軌道修正量(噴射による探査機速度の変化量、ΔV)が87メートル/秒となるよう調整する。1回目は18メートル/秒、2回目は53メートル/秒を目指す計画。燃焼時間は1回目が94秒間、2回目が276秒間を想定しているが、燃焼効率によって修正量を調整していく。3回で達成できなかった場合は4回目も検討する。
その後あかつきは、8月29日に近日点を通過。10〜12月に軌道の微修正を行い、12月6日に姿勢変更し、7日に金星周回軌道に投入する計画だ。軌道投入に成功すれば、3カ月ほどかけて機器のチェックを行い、16年4月ごろから本格的な観測をスタートする。
軌道投入ラストチャンス 「ご飯ものどを通らない毎日」
あかつきの燃料は残り少なく、金星周回軌道投入は今回がラストチャンス。7月の軌道修正も失敗はできない。中村プロジェクトマネージャは「ご飯ものどを通らないような毎日で、すごく緊張している」という。
特に緊張しているのは、トップ側エンジンを初めて長時間駆動させること。小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトマネージャを務めた川口淳一郎氏には「長時間エンジンを噴かせるのはやめて細かく軌道制御し、再投入は2018年、19年にしなさいと言われた」そうで、中村プロジェクトマネージャも「やったことがないことは緊張する」と話す。
ただあかつきは、機器の劣化が進んでいる。メインエンジンは壊れ、太陽の紫外線により外面も傷んでいるとみられる。内部の機器は「それなりの機能を維持」しているが、「何年間も太陽の周りを回すとさらに傷んでいく」ことは間違いない。「衛星が傷むリスクと、エンジンを長時間噴いて失敗するリスクを比べ、リスクが小さい方を選んだ」という。
「これがうまくいかなかったら諦めるつもりです」――あかつきはラストチャンスに挑む。
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