アニメもニュースもスマホで“実況”――TOKYO MX「エムキャス」がリアルタイム配信にこだわる理由:テレビとネットのいま(3/3 ページ)
東京ローカルのテレビ局「TOKYO MX」の番組が同時視聴できるスマホアプリ「エムキャス」が7月にリリースされた。オンデマンドではなくリアルタイム配信にこだわる理由は――ローカル局ならではのネット戦略に迫る。
朝の看板番組「モーニングクロスCROSS」も“実況”
9月3日には、堀潤さんをメインMCに、コメンテーターが独自のオピニオンを交えてニュースを紹介する平日朝の情報番組「モーニングCROSS」(月〜金、午前7時〜8時半)の配信をスタートした。
同番組は“聖域なきニュース番組”を掲げ、ネットで話題のニュースをランキング形式で紹介、TwitterのハッシュタグやWebサイトからの生投票システムで視聴者との意見交換を積極的に行う――など、これまでも積極的にネットやSNSを活用してきた。番組ハッシュタグの投稿件数は1時間半の放送時間で1000件を超えるという。
生放送をテレビと同時にネット配信するのは国内でも先進的な取り組みだ。芸能関係や他社提供素材など配信の許諾がないものはリアルタイムに「放送しない」「音声のみ」と画面を切り替えるシステムを新たに開発した。
放送初日から反響は大きく、テレビの前でエムキャスも同時に楽しむ視聴者も。「TLでよく見る番組、スマホで配信しているのか」「これで通勤中も見られる!」「エムキャスは今猫タイムです」など、東京圏外からのツイートも見られ、反応は上々だった。
「アニメでは“実況”がポピュラーなように、報道番組も同じように楽しんでもらえるのではないか」(服部さん)――ネット連動を強めることで既存の番組の視聴者層や可能性をさらに広げたいという。エムキャス本体からツイートを閲覧・投稿できる機能も9月をめどに実装予定だ。
「モーニングCROSS」の反響を見ながら、「バラいろダンディ」「淳と隆の週刊リテラシー」など、オピニオンを重視した看板番組の配信も検討する。
「エリアを超え、より多くの人に届ける手段」
社員100人強の小さな独立局だからこそ、「少し毒がある番組、“上品ではないが知性がある”番組で冒険したいという自負がある」(茅根さん)。アニメを入り口としたユーザーであっても、他の番組を知ってもらうきっかけになれば――と期待する。
エムキャスは、リリース当初から1年間の実証実験としており、今後の展開は未定。現在は番組中のCMも一部を除いて配信しておらず、正式に事業に組み込むとなるとネックになるのはマネタイズ面だという。新たな広告商品や課金策を生み出すか、リソースを投じる価値のある何か別のメリットを見いだせるか――さまざまなジャンルの番組を配信しながら可能性を模索していく。
「電波が届くエリアは絶対に広がらない、変わらない。テレビを持っていないという若い人も増えている中、オフタイムの使い方がテレビからスマホに流れていくのも止められない。テレビの将来として何が正解かはまだ分からないが、より多くの人に届ける手段があるのなら使いたいというのはシンプルな発想だと思う」(茅根さん)
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