「あかつき」がとらえた雲の写真に「なんじゃこりゃ」 金星軌道投入に成功、「世界の仲間入り」(3/3 ページ)
「あかつきは金星の衛星になりました」――中村プロマネはこう宣言した。あかつきが撮影した金星の雲の画像を見て、「なんじゃこりゃ」と驚いたという。
惑星探査で「世界の仲間入り」
メインエンジンの故障で軌道投入に失敗してから5年。あかつきは世界で初めて、姿勢制御エンジンを噴射して軌道投入に成功した探査機となった。
投入に当たって工学チームは、あらゆる異常を想定し、対策を用意していた。それでも救えない不具合も想定し、手動制御も準備。エンジン噴射は20分超と「非常に長い噴射だったが、1つのサインも見逃さないよう全員が集中して臨んだ」と廣瀬氏は振り返る。
「4つのスラスタがまんべんなく吹いた」ことが成功につながった1つの要因だと中村氏。「非常に丁寧にエンジンを選び、出力を合わせ込んで装着するなど、丁寧に探査機を作ったことが、非常事態に役に立った」。
最初の軌道投入に失敗したあかつきだが、「失敗することで、想像力をどこに働かせればいいのか勘所が分かってくる」と中村氏。「失敗をたくさんした米国や旧ソビエトは今はたくさん成功するようになったが、日本はまだその緒に就いたばかり。やっとこれで、日本も惑星探査で世界の仲間入りができ、日本が世界にデータを供給できるようになった」。
「投入」前日に「豆乳」鍋
2歳5カ月の娘を持つ廣瀬氏は、家族に支えられてここまで来たと話す。「夜遅く帰っても、娘は私の顔をみると大はしゃぎするので、本当に我慢しているんだなと分かった」。
軌道投入の前日、夫が豆乳鍋を作ってくれたという。「投入(とうにゅう)でしょ、と。娘と夫と3人で食べた。そういうことの支えの連続だなと」。投入に成功した様子をテレビで見た娘は「あかつき頑張ったね」と言ってくれたという。
今後あかつきチームは、5年間寝かせてきた機器の再起動や、劣化した機体の慎重な運用、微妙な軌道制御など、「厳しい運用が続く」と中村氏。「皆様のご支援をお願いしたいと思います」。
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