米Google傘下のGoogle DeepMindが開発したAI囲碁ソフト「AlphaGo」が3月12日、李世ドル(イ・セドル)九段に3連勝して、「AIが人間に勝った」ことは記憶に新しい。
AlphaGoは、もちろんパソコン1台でそんな性能を発揮したわけではない。1000台以上のプロセッサを束ねたクラウドサーバの上で動作した。具体的には、Google Cloud Platform(GCP)というサーバの上で動作したことが、Googleの公式ブログに述べられている。いわば、自社サーバだ。厳密には別会社だが、グループ内割引ぐらいはあるだろう。とはいえ、まともに支払えばいくらぐらいのコストがかかったのか気になってくる。
サーバの利用料金は、リソース(プロセッサ数、メモリ領域、ディスク領域など)に利用時間を掛けて決まる。たくさんのプロセッサを長時間借りれば、それだけ料金がかかるということだ。公開されているGCPの利用料金を元に、AlphaGoの運用コストを計算してみる。
AlphaGoが本番でどれだけのリソースを使用したか。プロセッサ数が、CPUサーバを1202個、GPUサーバを176個だと「Nature」の論文概要では伝えている。CPUサーバ1台あたりのコア数は最大の32コアとする。それ以外のスペックは不明だが、メモリとディスクは最大レベルで使用しただろう。AlphaGoの開発期間は2年間で、その間に500回の対戦を経て学習を積み重ねてきたという。本番と同レベルのプロセッサを借りていたとは限らないが、ここは最大限で想定してみる。GPUのレンタル料金は公開されていないので別料金になるが、だいたいの目安にはなるはずだ。
以上の仮定を元にGCP料金計算ツールに入力すると、3年契約で3853万8043ドルという結果になった。2年で2569万2028ドル、現在のレートで約28億7750万円だ。ちょっと円安に振れれば30億円の大台に乗る。そして、ここにGPUの利用料金が加わる。
もちろん、これにAlphaGo自体の開発費は含まれていない。純粋に運用コストだけの計算だ。世界を驚かせ計算機科学史上に残る成果のための、そして自社グループのハード・ソフトの技術をアピールするための運用コストとして、高いだろうか安いだろうか。
ところで、AlphaGoのサーバコストを「2年間で最低60億円」とするうわさもあるのだが、倍額になる根拠がよくわからない。あなたはどちらの「うわさ」を信じるだろうか。
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