Apple、米司法省の審問中止申請を受け「さらなる議論を続ける」と声明
米司法省がFBIへのAppleの協力が不要になったとして法廷審問の中止を地裁に要請したことを受け、Appleが「今後もセキュリティとプライバシーに関する国家的な議論に参加していく」という声明を発表した。
米司法省が3月28日(現地時間)、米連邦地裁にAppleへの捜査協力命令が不要になったという状況報告書を提出したことを受け、米Appleが米メディア各社に以下のような声明文を送った。
最初から、われわれは米連邦捜査局(FBI)からのiPhoneのバックドアを構築しろという要求に反対だった。なぜならそれは間違ったことであり、危険な先例を作ることになると信じていたからだ。政府による訴訟取り下げにより、バックドアの作成も危険な先例も回避された。この訴訟はそもそも起こされるべきではなかった。
われわれは今後もこれまで通り捜査当局に協力していく。また、データへの攻撃がより頻繁に、より高度になっていく中で、製品のセキュリティをさらに強化していく。
Appleは、米国および世界の人々はデータ保護、セキュリティ、プライバシーを確保する権利があると深く信じている。いずれか1つを守るために他を犠牲にすることは、人々および国々をより大きな危険にさらすことにしかならない。
今回取り下げられた訴訟は、人権擁護、セキュリティ、プライバシーに関する国家規模の議論に値する問題を提起した。Appleは今後もこの議論への参加を続けていく。
Appleが捜査協力命令を拒否したことに関する法廷審問は2月22日に予定されていたが、直前になって司法省がAppleの協力がなくても捜査に必要なiPhoneのロックを解除できそうだとして審問の延期を申請。司法省は28日、第三者の協力によってロック解除ができたので審問を中止するよう連邦地裁に申請した。申請文書には、ロック解除の方法などの詳細は記されていないが、サン電子傘下のイスラエル企業Cellebriteの技術が採用されたとうわさされている。
Appleや同社を支持する米MicrosoftなどのIT企業大手は、この問題を契機に、司法省が今回の命令の拠り所としている「All Writs Act」(全令状法)の改定に関する国家的議論を展開しようとしていた。
関連記事
- 米司法省、「ロック解除に成功したのでAppleの助けはもういらない」
テロリストのiPhoneのロック解除ツールをめぐる米連邦政府対Appleの対立で、米司法省が「Appleの助けを借りずにロック解除に成功した」と報告したことで法廷での直接対決が中止になった。 - Apple対米政府の法廷審問、政府側の要請で4月5日以降に延期
AppleがFBIへのiPhoneのロック解除ツール提供を拒否した件で予定されていた3月22日の法廷審問が、司法省の要請で延期になった。司法省はその理由として、Appleからのツールがなくてもロック解除できる可能性が浮上したためとしている。 - Apple、対FBI問題での支持団体リストを公開・更新中 Intel、Twitter、EFF他
AppleがFBIにiPhoneのロック解除ツールを提供すべきかどうかを判断する3月22日の法廷審問を前に、IntelやTwitterなどのIT企業や人権保護団体が続々とAppleを支持する法廷助言書を提出しており、Appleが公式サイトでそのリストを公開した。【UPDATE】Microsoft、Facebook、Google、Amazonなども追加された。 - FBIのコーミー長官、「iPhoneのロック解除が必要になったのはミスのせいだけではない」
FBIのジェイムズ・コーミー長官は米連邦下院法務委員会の公聴会で「バックドアが必要になったのはFBIがミスでパスワードを変えたせいではないか?」という質問に対し「ミスはしたが、たとえしなかったとしてもiPhoneのデータを調べるためにツールを要請しただろう」と答えた。 - Microsoftの法律顧問、フロッピーとSurfaceを並べ「法律も変わるべき」と主張
Appleが米連邦地裁からのFBI協力要請を拒否した件に関連する連邦下院司法委員会の公聴会で、Microsoftの法務担当上級副社長、ブラッド・スミス氏がIBMが1986年に発売したフロッピーを使うPCや更に古い“加算器”を持ちだして、関連する連邦法がいかに時代遅れで、改正する必要があるかを説明した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.