Microsoft、米司法省を提訴──顧客データ開示の口外禁止令は違憲
Microsoftは、捜査当局がクラウド上の顧客データ開示を命令するに当たって顧客への口外を禁ずるのは違憲だとして米司法省を提訴した。
米Microsoftは4月14日(現地時間)、顧客の権利を守るため、米司法省(DoJ)を提訴したと発表した。ワシントン州西地区連邦地方裁判所への訴状もこちら(リンク先はPDF)で公開した。
同社の法務担当上級副社長、ブラッド・スミス氏は公式ブログで、米国民および米国の企業は、わずかな例外を除いて米国政府によるメールやデータへのアクセスを知る権利があるが、近年政府がそうしたメールやデータを提供する企業に対し、米合衆国法典第18編第2705(b)条の下、企業への開示命令について当事者に秘密にするよう命令することが常態化しており、これは憲法に違反すると主張する。
米政府当局はMicrosoftに対し、過去18カ月だけで2576件の法的請求に関する口外禁止を命じたという。このうち68%に当たる1752件の禁止命令については期限が設定されておらず、Microsoftの顧客は政府が自分のデータを保有していることを永遠に知ることができないとスミス氏は説明する。
これは、米国憲法の修正第4条(不合理な逮捕捜索、もしくは押収に対し、身体、住居、書類および所有物の安全を保障される人民の権利は、これを侵害してはならない。令状はすべて、宣誓もしくは確約によって支持される、信頼するに足る理由に基いてのみ発せられること、かつ捜索さるべき場所および逮捕押収せらるべき人または物件を明示していなければならない)と修正第1条(連邦議会は、国教の樹立を規定し、もしくは信教上の自由な行為を禁止する法律、また言論および出版の自由を制限し、または人民の平穏に集会をし、また苦痛事の救済に関し政府に対して請願をする権利を侵す法律を制定することはできない)を侵害すると同氏は主張する。
捜査当局が個人や企業が事務所のロッカーなどに保存している重要な書簡や文書を調べるには当事者への令状の提示が義務付けられているように、Microsoftのデータセンターに保管されている個人や企業のデータへのアクセスについても当事者に知らせる必要があるとしている。
スミス氏は2月、米AppleがFBIへの例外的な協力を拒否したことに関連する連邦下院司法委員会の公聴会で、1986年に成立した電子通信プライバシー保護法(ECPA)を時代の変化に合わせて改定するべきだと主張した。
米Appleが連邦地裁からのFBIへの協力要請を拒否した件を契機に、米国では個人のプライバシーと国家安全のバランスをめぐる議論が活発になっている。
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