Twitterが買収したライブ動画配信「Periscope」の強みとは? 創業者に聞いた
Periscopeの創業者でありCEOのケイヴォン・ベイポーさんに話を聞いた。
Twitterが買収した動画生配信アプリ「Periscope」をご存じだろうか? 米Periscope社は、2015年1月末に同アプリ公開前にTwitterが買収した企業。テニス全米オープンのライブ放送や「Louis Vuitton」公式チャンネル設立など活用例が増えており、ライブ動画サービスの新定番になるのではないかと注目を集めている。
Periscopeは1つの独立した動画生配信アプリだが、Twitterと連携させて配信開始時にフォロワーに通知したり、Twitterのタイムライン上で動画を見たりできる。最近、ITmedia ニュース編集部でも「ITmedia ニュース TV」としてPeriscopeをスタートした。しかしなぜ、競合サービスが多数ある中でPeriscopeは生まれたのか。今回初来日だというPeriscopeの共同創業者、ケイヴォン・ベイポー(Kayvon Beykpour)CEOに聞いた。
「Periscopeのアイデアが浮かんだのは約2年前。次の仕事を探しているちょうどその時期に、トルコのイスタンブールに旅行に行く計画をしていました。そのころ、現地の情勢が危うく、私たちはテレビやTwitterでトルコの状況を把握しようとしました。ところが、テレビに映し出されていたのは第三者視点の『人が歩いている映像』でした。私たちが知りたかったのはライブで何が起こっているか。第三者としての映像ではなく、彼らが目にしているものを見たかったのです。そのとき最初のアイデアを思い付きました。自分の見てるものを発信でき、発信された側はリアルタイムに状況を見ることができる、そんなテレポートできるようなデバイスを作りたいと思ったのです」(ベイポーCEO)
2015年3月にiOSアプリ、5月にAndroidアプリが登場したPeriscopeは、16年3月時点で世界累計2億件以上のコンテンツが配信されている。ユーザー数は非公開としているものの、1日当たりの動画視聴時間は約110年(96万3600時間)に相当するという。既存のTwitterユーザーへのアプローチと、Twitterを使っていればすぐに利用できるといった配信側の手軽さがハードルを低くしているようだ。
手軽さといえば、Periscopeは配信スタイルが基本的に縦という特徴もある。これまで、スマートフォンで動画を配信しようとすると横長に構える必要があったが、Periscopeはより自然な持ち方で配信できる縦長に最適化したフォーマットを用意している。
ベイポーCEOによれば、よく見られるコンテンツで多いのは、Louis Vuittonの公式チャンネルが配信しているようなハイクオリティーの映像。ただ、個人アカウントの場合は視聴者がファンや知り合いのため、クオリティーの高さよりも“ライブ性”が重要になるという。動画がきれいに見れて対話できることが、Periscope配信では優先されるそうだ。
視聴者数は、プッシュ通知と連動するためTwitterのフォロワー数に比例する場合が多いとのこと。見られる時間帯はコンテンツ内容により、特にこの時間に多く見られるといった定量的なデータはないという。
ちなみに、現在Periscopeはスマートフォンアプリでのみ配信できるが、PCや360度カメラなどでライブ配信できるプロ版の「Periscope Producer」が一部のユーザー向けに公開されている。Periscope Producerでは、動画が始まる前に6秒〜30秒の広告を入れることで収益化も測れるという。
――と、ここまでPeriscopeについて見てきたが、サービス自体にそれほど目新しさがあるわけではない。ライブ動画配信サービスといえば、YouTube ライブやUstream、Facebook Live、ニコニコ生放送など似たようなサービスがいくつもある。これらと何が違うのか。筆者は率直に聞いてみた――「Twitterと密に連携しているところです」(ベイポーCEO)。
Periscopeの特別な機能や開発のこだわりが挙げられることを想定していた筆者は、一瞬耳を疑った。「機械的な“ツール”という意味では(競合サービスと)同じ。しかしわれわれが圧倒的に他と違うのはTwitterと密に連携していることだ。国によっては、Twitterに情報を頼っているところもある。(そうした社会的インフラである)Twitterと密にリンクしているところにこそ、われわれはパワーがあると思っている」。
PeriscopeがTwitterと手を組んだのは、もともとミッションが似ていたためだという。「Twitterは今起こったことを140文字で伝え、Periscopeは動画で伝える。伝える手段は違うが、より早くより確実に、生きたままの鼓動(脈拍)を届けたいという想いが同じだった」――ベイポーCEOはこう話す。
自分で生み出したサービスがありながら、ここまで言いきれてしまうものか。そんなことより重要なことが彼の中にはあるのかもしれない。「第三者としての映像ではなく、彼ら自身が目にしているものを見たい」――この思いこそが、Twitterへの強力なリスペクトとなり、Periscopeのパワーにつながっているのだと感じた。
(太田智美)
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