ランサムウェアから大切なデータを守る鍵「レジリエンス」とは何か?:新連載・ITりてらしぃのすゝめ(2/2 ページ)
「身近な話題を例にITリテラシーを高める」連載がスタート。世界中で猛威をふるったランサムウェア「WannaCry」。大切なデータを守るために普段からできることはあるのだろうか。
データの棚卸し:「本当に大切な情報」は何か
まず、自分が一体どんなデータを持っているかを棚卸しすることから始めましょう。あなたのPCにはどんなデータが入っていますか。そのうち、自分しか持っていないデータや、絶対になくしたくないデータはありますか。
例えば「音楽ファイル」。mp3やAACファイルはもしかすると、音楽配信サービスで代替できているかもしれません。私は音楽ファイルのライブラリが1TB程度ありましたが、今ではApple Music(iTunes Match)やGoogle Play Musicのアップロード機能を使うことで、データをクラウド上に置くことができるようになりました。
PC内からライブラリを消せましたので、バックアップを個別にとる必要はないでしょう(時間はかかるものの、そもそもCDを持っていれば、それが元データになるので再取り込みすればいいはずです)。
その他にも、あなたしか持っていないデータとして「写真」があります。私はこれについてもGoogle PhotoやiCloud フォトライブラリに保存するようにし、PC内には保存しないようにしました。
音楽も写真も、クラウドに保存することでスマートフォンからのアクセスが簡単にでき、これまでPC内に大事に保存していたときよりも便利に扱えるようになりました。特に写真はスマートフォンとは切っても切れないもの。充電のタイミングで撮影した写真をクラウドに保管・バックアップを勝手にやってくれるのは本当に便利です。
そして最も大事な、仕事や趣味のファイル群。私の場合はこれも全てDropboxを使ってクラウドと同期をとっています。常に同期をしていますし、Dropboxの場合はある程度の履歴管理をしてくれていますので、間違えてファイルを消しても復活することが容易で、これはクラウド同期をしていることによるメリットの1つといえるでしょう。
一番大事で、最も容量が大きいこれらのファイルは、そのほとんどをクラウドに逃がすことができます。本来、クラウドに置くことがバックアップとは異なり、厳密にはさらなるバックアップを準備することが望ましいですが、何もしないよりははるかに安全です。そのため、今の時代のバックアップは「クラウドサービスをフル活用する」と考えてください。
もちろん、そのクラウドサービスが狙われないよう、パスワードを強固なものにする、2要素認証が利用できる場合は必ず設定することもお忘れなく。
データがクラウドにあれば、OSはバックアップ不要かも
実は私も、先日のmacOSのアップデートを適用したときに見事に失敗し、OSが起動しなくなったという経験をしたばかりです。macOSは標準で大変便利な「Time Machine」というバックアップ機能があり、基本的に毎日バックアップが行われていたので、アップデートに失敗しても戻せばいい、という考え方でした。
問題はその「復旧のための時間」。バックアップ対象のデータ量が多ければ多いほど、復活にかかる時間も長くなります。
それを考えると、動画や写真、音楽といった大きなサイズのデータをPC内に置くのは効率がよくありません。それらのデータがクラウドにあれば、OSをいちから入れ直し、最低限必要なアプリをインストールした後、クラウドと同期をとるという方法が最も速く復旧できるようになるはずです。
特に今、個人に対してのサイバー攻撃で最も狡猾(こうかつ)で被害が大きいのは「ランサムウェア」です。データを人質にするという攻撃に対して、もう1つの対抗策として「PC内に人質となりうるデータを置かない」ことも有効のはず。
そのためには、まずどのようなデータが保存されているかを棚卸しし、それらをできるだけクラウドに逃がすこと。そして、強固なパスワードと2要素認証でクラウドサービスを守ります。万が一ランサムウェアに感染したとしても、これならば身代金を払う必要はありません。OSを再インストールし、クラウドに接続すればいいだけですから。
個人のPCやスマートフォンを脅威から守るには、私たちも「レジリエンス」を高める必要があります。具体的にはOS、アプリを最新にすること、バックアップをとること。そのバックアップも、手間なく勝手にやってもらうのならば、クラウドサービスが最も便利です。脆弱性を突く攻撃にまけないカラダを作るため、今日から挑戦してみてはいかがでしょうか。
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