旧日本海軍「伊58」らしき潜水艦、見つかる クラウドファンディングで研究資金募る
長崎県五島列島沖で、海底に突き刺さった「伊58」らしき潜水艦が発見された。艦名を特定するため、研究チームがクラウドファンディングで資金を募っている。
長崎県五島列島沖の海底に、潜水艦が突き刺さっているのを発見した――そんな研究成果を、一般社団法人ラ・プロンジェ深海工学会がこのほど発表した。艦名を特定する調査を行うために、クラウドファンディングサイト「academist」で資金を募っている。支援は1000円(税別)から。
五島列島沖の水深200メートルには、第二次大戦後に米軍が処分した旧日本海軍の潜水艦24隻が眠っている。日本テレビが2015年に調査し、沈んだ24隻の場所を突き止め、そのうち1隻が「伊402」だと判明していた。だが、同海域は流れと濁りが激しく、海底調査が難しいため、残り23隻の艦名は特定できていなかった。
研究チームは、このうち「伊58」と「呂50」の2隻の特定を目標に、5月19〜21日にソナー調査を実施。調査中、これまで岩石のような「ノイズ」と判断していたものが、実際は海底に突き刺さった状態の別の潜水艦だと分かった。同時に「No.23」と名付けていた別の潜水艦らしきものが、ノイズだったことも判明したという。
新しく見つかった潜水艦は「伊58」か、その同型艦の可能性が高いという。研究チームは、今年8月から遠隔操作式の無人潜水機(ROV)を使い、沈んだ船体を細かく撮影することで艦名を特定する予定。調査のために、ROVの運用費や画像処理費用をクラウドファンディングで募るとしている。
ラ・プロンジェ深海工学会の浦環代表(東京大学名誉教授)は「日本の潜水艦の実態を明らかにすることは、海中技術者としての使命。これまで蓄積してきた知識と技術と人脈を総動員して進めていく」とコメント。潜水艦の特定後は、そのデータを使って啓発活動や教育活動に取り組むという。将来的には「伊58」を引き上げ、記念館の創設を目指す。
「海に沈んでしまったものは、"水に流され"てしまい、忘れさられようとしている。それぞれの潜水艦を特定し、その現在の姿を明らかにすることにより、戦争のない平和な社会を目指していく」(浦代表)
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