「プレミアムPC」とは? 高価な商品を買うあなたが“次世代に貢献”している理由:“中の人”が明かすパソコン裏話(3/3 ページ)
メーカーの中の人だからこそ知っている“PCづくりの裏話”を明かすこの連載。今回は「プレミアムPC」について解説します。
次世代への継承とは
最先端の部品は大量生産の効率が悪く、高価になる傾向があります。例えば高解像度化が進む液晶パネル。最近は4K解像度を搭載するPCも現れましたが非常に高価なものとなっています。
ストレージもHDDからSSDに世代交代が進んでいますが、1TBなど大容量のSSDはまだまだ高価。普及モデルで大容量のストレージを搭載するときには、HDDが選ばれることが多い状況です。
HDDに比べてアクセス速度が高速で耐衝撃性にも優れるSSD──メーカーはこのような最新技術を全てのモデルに搭載したいと考えます。しかし、どうしても高価であり、最初からボリュームゾーンである普及モデルに搭載すれば、コスト増は避けられません。
コストが増えれば価格が上昇し、結果的にお客さまの期待する価格レンジからは外れて手に届かないものとなってしまいます。こういった最先端の技術は大量生産に向いていないことも多く、最初からボリュームゾーンに応用してしまうと生産効率が追い付かずに納期が極端に悪くなってしまう可能性もあります。
このような理由から、最新の機能やハードウェアは最初にプレミアム製品に採用して実績を積んで量産性を上げていき、生産コストを下げることで幅広い製品に行き渡るようになります。そして最終的にボリュームゾーンの製品に搭載するというゴールに向かうのです。
米Tesla Motors(テスラ)のイーロン・マスク氏が、高価なバッテリーを大量に搭載することで航続距離が長く高性能な『Model S』を販売し、そこで得られた利益をもとに『Model 3』という普及型モデルを開発し発表したことは記憶に新しい出来事かと思います。
これは、プレミアム商品には次代を担う「開拓者」としての役割があるともいえます。
プレミアムPCを手にするということは、所有した現在においての最先端の機能や性能を堪能できるだけでなく、次代への継承と進化に、ひいては多くの方へ機能を広めるために未来を切り開いていると考えられます。
いかがでしたでしょうか。ちょっとした特別感を味わうことができるプレミアムPC、見掛けたらぜひチェックしてください。
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