宇宙から“風”観測――飛行機の燃料ロス抑えるアイデア 宇宙ビジネスコンテストで大賞
宇宙から観測した高精度の風データで、飛行機の燃料ロスを削減して経済効果を見込むアイデアが、宇宙ビジネスアイデアコンテスト「S-Booster2017」で大賞を受賞した。
内閣府や宇宙航空研究開発機構(JAXA)などが主催する、宇宙でのビジネスアイデアを募るコンテスト「S-Booster2017」の最終選抜会が10月30日に行われ、宇宙から観測した高精度の風データで飛行機の燃料ロスを削減するアイデアがコンテスト大賞を受賞した。
発案者は全日本航空の運航部門に勤める松本紋子さん。多くの候補者がチームで参加する中、個人で参加した。松本さんは、温室効果ガスの排出権取引により2020年以降、飛行機のCO2排出量によっては排出権を購入しなければならず、航空券の価格に影響が出る可能性を指摘。この問題を解決するため、飛行時の燃料ロスをより抑える方法として「高精度な風の予測」に目を付けた。
現状でも気象衛星などから風は観測されているが、観測データから得られる予測風には3〜4メートル毎秒の誤差があるという。これは飛行機が1時間飛行した場合の燃料誤差としては約450キログラムに及ぶ。松本さんは、より高精度に風を観測できる「ドップラーライダー」という機器を搭載した衛星を打ち上げることで予測精度を高めることを提案した。
松本さんの試算によれば、これにより燃料量を1%削減できたとしたら世界中の飛行機から年間で365万トンの燃料量削減が見込まれるという。燃料コストにして180億円のカットとなり、CO2削減効果は1200万トン、経済効果は3200億円に上ると説明した。
ドップラーライダー搭載衛星は、2018年1月に初めて欧州宇宙機関が気象観測目的に打ち上げる予定だ。その観測データからまずはシミュレーションを開始し、実証実験を経て5年後をめどに運用体制を構築したいとしている。
「実現可能性と確信性を兼ね備えた提案」などを理由に、大賞とスポンサー賞(スカパーJSAT)をダブル受賞した。
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