日本企業が米国より欧州スタートアップと相性のいい理由:新連載・あなたの知らない欧州スタートアップの世界(2/2 ページ)
日本企業は欧州のスタートアップと相性がいい? フランスで15年間ベンチャーキャピタリストとして活動するマーク氏がその理由を解説する。
「考え方や文化で通じるところがある」とマーク氏は言う。
欧州のスタートアップは初期からグローバル志向で、言語やレギュレーションが違う市場を当然のように考えている。海外の会社と一緒に何かやることに全く抵抗がない。米国のトップダウンのスタイルではなく、いろいろな人の意見を聞き入れコラボレーションするやり方が主流だ。情報のプライバシーやデータの管理は日本よりうるさい。
シリコンバレーではデベロッパーの取り合いや人材放出が横行しているが、欧州では誰でもどんな理由でもクビにできない。フランスはとくに厳しいという。慎重にロングタームにサスティナブルに企業を作っていき、必要になったら採用するという戦略をとるのは日本と似ている。
さらに米国では膨大な資金調達をし、利益が出ずともどんどん会社を成長させ、あらゆる参入障壁を作ることで誰よりも早くEXIT(ベンチャービジネスや企業再生などで、創業者やファンドが株式を売却して利益を手にすること)までいき、マーケットを囲うことができる。1つの戦略としてはありだが、他のスタートアップが立ち上がりにくくなる側面がある。
欧州の場合、米国ほどお金が出るわけではない。競合も少なく、投資のバリュエーションも低くやりやすい。「シリーズA」(投資ラウンドのこと)では米国より40%、「シード」になると60%低くなる。同じマーケットでも何社か一緒に成長していくケースが多いのは、長期的かつ確実にビジネスを作る方法をとっていることに起因する。
ベルギー、フランス、ドイツ、オランダ、イタリア、ルクセンブルク、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、イギリスで投資経験を持つマーク氏は断言する。「いいDeep Techのスタートアップと提携できるチャンスは欧州に眠っている」
著者:アドライト(企業情報)
イノベーション創造を支援するコンサルティング会社。大手企業や中堅企業のオープンイノベーションをマッチングから事業化まで一気通貫で並走しながらサポート。新規事業開発の支援や国内外スタートアップの育成、主要国立・私立大学との産学連携プロジェクトも豊富。現在、ベンチャー事業創生ファンド設立の準備を進めている。
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