“日本が知らない”海外のIT
“キャンプに特化したAirbnb”の「Hipcamp」 米国の若者になぜ人気
ミレニアル世代は「モノ」ではなく「体験」を選ぶ
子供の頃の、楽しかった夏の思い出。その1つにキャンプ場での体験を思い出す人は多いのではないだろうか。「体験」とは、何十年たっても色あせず、記憶の中に残っているものだ。
時代は、モノから体験の時代にシフトしている。人々は昔に比べ、記憶に残る楽しい体験を求めるようになってきているといえるだろう。
民泊サービス大手の米Airbnbが、さまざまな宿泊バリエーションを開拓するのも、体験に価値を置く時代のニーズを満たそうとするからに他ならない。ツリーハウスから古城まで、いまやどんな場所でも宿泊できる。
体験を提供するのはAirbnbだけでない。時代の流れに呼応するように、さまざまなサービスが登場している。その1つが、“キャンプ場版Airbnb”とも呼ばれる「Hipcamp」だ。
都会から離れ、インターネットアクセスを一時的に遮断する「デジタルデトックス」人気の上昇も相まって、米国ではキャンプなどアウトドア体験への需要が急激に伸びている。ミレニアル世代(2000年代に成人・社会人になる世代)を中心とした層がそのけん引役だ。
Hipcampはそんなミレニアル世代に、アウトドア体験を提供するデジタルプラットフォームとして支持を得ている。今回はこのHipcampの人気の理由を探ってみたい。
連載:“日本が知らない”海外のIT
日本にまだ上陸していない、IT関連サービス・製品を紹介する連載。国外を拠点に活動するライター陣が、日本にいるだけでは気付かない海外のIT事情をお届けする。
キャンプ場版Airbnb「Hipcamp」とは
2015年に登場したHipcampには、現時点で米国内のキャンプ場を含め、アウトドア・アクティビティーに特化した場所が28万5000カ所以上登録されている。
キャンプ場のほかには、牧場、ぶどう園、農場などが含まれる。ホビットキャビン(小人の小屋)やユルト(円形型移動テント)など、工夫を凝らした宿泊施設もある。
使い勝手やホスティングの仕組みは、Airbnbとほとんど同じような印象を受ける。ただ、サイト上ではアウトドアに特化した検索フィルターを用意しているのが特徴的だ。
例えば、アメニティー項目の検索フィルターには、ピクニックテーブル、火、飲水、トイレ、シャワーといった、アウトドアならではの選択肢がある。アクティビティー項目では、自転車、ボート、釣り、ハイキング、乗馬、パドリング、ウィンドスポーツ、クライミングなどが選択できる。
宿泊施設がすでにある場所もあるが、多くはオープンスペースで、テントを持参するか、自動車を寝床にする必要がある。オープンスペースの場合、価格は一晩数十ドルで利用できる。テントや宿泊施設が常設された場所では、価格は100ドル(約1万円ほど)から。
Hipcampに注目が集まる理由の1つは、キャンプ場・宿泊場所のバリエーションの豊富さだ。先述したように、28万件を超える場所が登録されているわけだが、ここまで登録数が増えたのにはいくつか理由がある。
Hipcampによると、もともと米国国土の60%は私有地でありながら、そのほとんどが利用されていない状態だったという。一方、土地を有効利用したいものの、開発はせず自然をそのまま残しておきたいと考える土地の所有者が多くいた。
そこで、自然のまま土地を有効活用したいと考える所有者と、自然を満喫したいというキャンパーたちをつなげるプラットフォームを提供することで、需要と供給を結び付けようとしたのがHipcampだ。
また、米国では国立公園に関するオープンデータをサードパーティーが活用し、国立公園への訪問者を増やそうというムーブメントが起こっており、このデータをうまく活用した企業の1つがHipcampだった。
Hipcampは、ミレニアル世代をターゲットにしたソーシャルメディア戦略やコミュニティーマネジメントにも長けており、同世代からの支持を集めることにも成功している。
例えば、8月に米国で観測された皆既日食にあわせて、日食を楽しめる600以上ものキャンプ場を紹介し、140万以上もサイト訪問者を増やしたという。現時点でFacebookでは3万以上のいいねを集め、インスタグラムでは16万人以上のフォロワーを獲得している。
特に消費大国といわれる米国に生まれ育ったミレニアル世代は、親世代の消費カルチャーに対して異を唱え、独自の価値観を形成している。オンラインチケットサービス米Eventbriteの調査では、米国ミレニアル世代の78%がモノより体験を選び、77%が体験がアイデンティティーを醸成すると回答したという。ミレニアル世代が体験を重視しているのが見て取れる。
HipcampやAirbnbなど、体験を生み出すサービスはどこまで進化していくのか。日本でも同様のサービスが出てくるのか。今後の展開に注目だ。
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