なぜここまで話題に? 「漫画村問題」を改めて整理する:ITりてらしぃのすゝめ(2/3 ページ)
海賊版サイト「漫画村」をめぐる問題が話題だ。今、一体何が起こっているのか。改めて問題点を整理したい。
海賊版に対する広告問題:「アドフラウド」という大きな問題
そして漫画村問題から大きく注目を集めたのが、そもそもこういったサイトが「お金を集めることが可能になっている」という問題です。この点に関しては、お金の流れがどのようになっているのかを斬り込んだ、ねとらぼの記事群をぜひご確認ください。
もはや「反社会勢力」と考えてもいい海賊版サイトへ、お金の流れが出来上がってしまっていることが大きな問題です。そして、NHKの番組で取り上げられた“裏広告”こと、アドフラウド問題も知っておくべきポイントでしょう。
アドフラウドとは「広告詐欺」のこと。ネットの広告とは、広告を出したい「広告出稿主」と、実際に広告を表示する「メディア」、さらにその間を取り持つ「広告代理店」の3者が関係しています。
通常は広告出稿主が、広告代理店に対して「正しいメディアに広告を出してくれ」と依頼します。広告主は広告の表示回数や、クリック回数を指標にするのですが、それを「水増し」できてしまうことが大きな問題です。
広告を表示しても、その相手が人間ではなくプログラムだったり、そもそも人間が見えない所に表示したとしても「1表示」とカウントされたらたまりませんね。
この点は、特にメディアや広告に携わる人にとって、死活問題となり得る大きな課題です。関連する方は引き続き動向をチェックすべきでしょう。
ブロッキング問題:憲法で定めた「通信の秘密」に抵触してもいいのか
漫画村が引き起こした議論のうち、注目すべきは「ブロッキング」という行為です。
まず、政府は2018年4月13日に、個人的には何とも理解しがたい玉虫色の発表を行いました。海賊版漫画サイト「漫画村」、海賊版アニメサイト「Anitube」「MioMio」を名指しし、「ブロッキングが適当であると考えられる」と判断し、インターネットサービスプロバイダー(ISP)が主体となり遮断(ブロッキング)すべし、としたのです。
そもそも、憲法や法律において、通信事業者は「通信の秘密」を侵害してはならないとあります。しかしISPのNTTグループは4月23日、「ブロッキングの予告」を発表しました。
これに対し、業界団体や関係者からは多くの反対の声が上がっています。通信事業者はどんな宛先であっても通信の内容に介入すべきではなく、フィルタリングサービスなどのように「当事者の理解と許可」が必要です。
通信の秘密を守ることは通信事業者が第一に考えるべきことだと私は考えており、私自身もこのブロッキングには慎重になるべきだと考えています。
「漫画村はいけない、それなのにブロッキングはダメだというのは漫画村を使いたいからではないか?」という声が出てくるのも分からなくはありません。もはやブロッキング問題は、漫画村の直接の是非とは外れ、通信業界がどうあるべきかという、より大きな、そして身近な問題としてクローズアップされています。
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