カシオがもたらしたデジカメの歴史を振り返る(4/4 ページ)
2018年5月9日。カシオ計算機がコンパクトデジカメからの撤退を発表し、多くのカメラファンに衝撃を与えた。そんなカシオの歴史を振り返りつつ、哀しんでみたい。
スマホへの自動転送機能を初めてつけたのもカシオだったが
と、こうしてQV-10からの歴史を概観してみると、カシオは何度もコンパクトデジカメのトレンドを作り、(時には失敗もしつつ)新しいジャンルに挑戦してきた会社というのが分かる。
往年の「カメラ」という枠に囚われない製品を作ってきただけに、今回の撤退は実に残念。
さて話ははじまりにもどり、おわりがはじまる。
1995年、カシオは「ビジュアルコミュニケーション」をコンセプトにQV-10を作った。それがカシオの原点であり、ときどき市場に振り回されはするものの、煮詰まると「ビジュアルコミュニケーション」という原点に立ち返った新しい製品を作り出してきたわけだ。
でも、2008年のiPhone 3Gを筆頭に、スマートフォンが普及し、カメラ機能が向上するに従って、「ビジュアルコミュニケーション」ツールの主役の座が完全にスマートフォンに移る。
「コミュニケーション」はスマートフォンが一番得意とするところ、というかそれが本職だからだ。
カシオも当然それを分かっているわけで、いち早くBluetoothを利用したスマートフォンへの自動転送機能を開発し、スマートフォンと連携を図ったが、それでも大きな流れには抗えなかったといっていいんじゃなかろうか。
頼りだった東アジア市場の自撮りカメラTRシリーズも、中国韓国系のスマートフォンがカメラ、特に自撮りにすごく力を入れてきておりクオリティもここ1〜2年で飛躍的に上がった影響を受けたと聞いている。
カシオがQV-10で目指したビジュアルコミュニケーションのためのカメラという新しいジャンルはスマートフォンに受け継がれたのである。
映像事業から完全撤退というわけではないそうなので、「カメラ」という型に囚われない、新しいジャンルの製品をまた作って欲しいと願う次第。
そんなわけで、最後に、カシオが最初に出したQV-10と、最後に出した(日本未発売の)「TR mini」(TR-M11)のツーショットをどうぞ。QV-10はわたしの私物。TR miniは山田久美夫さん所蔵のもの。先日ヒマナイヌスタジオで行われたイベントでの撮影です。
関連記事
- 10年先の写真を見据えて――カシオ「QV-10」
撮ったその場で写真を見られるカメラとして、鮮烈なデビューを飾ったカシオ「QV-10」。もしまだ手元にあるならば、「ポラロイドアート」で楽しんでみるのも悪くない。 - 「長い間のご愛顧、ありがとうございました」 カシオ、デジカメ生産終了告知ページをオープン
「長い間のご愛顧、ありがとうございました」――カシオ計算機が、デジタルカメラの生産終了を告知する特設ページをオープンした。 - カシオ、コンパクトデジカメからの撤退を正式発表 「市場縮小により挽回できず」
カシオ計算機が、不採算のコンパクトデジタルカメラから撤退すると正式発表した。独自ジャンル新製品を投入したが、市場縮小により挽回できなかったという。 - カシオ、コンパクトデジカメから撤退か
カシオ計算機が不採算のコンパクトデジタルカメラから撤退する方針を固めたと、一部で報道された。同社は「さまざまな選択肢がある中、詰めている段階」という。 - カシオの“変形自撮りカメラ”「EX-TR15」、限定3000台が完売
カシオは、3000台限定で販売していた“自分撮り”がしやすい回転機構を備えたデジタルカメラ「EX-TR15」が完売したと発表した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.