Windows 10で使える「Windows MR」って何ができるの?:“中の人”が明かすパソコン裏話 MR特集(1)(2/2 ページ)
メーカーの中の人だからこそ知っている“PCづくりの裏話”を明かすこの連載。今回から全3回で「Windows MR」をご紹介。どんな体験ができるのでしょうか。
インサイドアウト方式のデメリット
ここは公平に、Windows MRヘッドセットのデメリットも挙げておきましょう。センサーカメラは光学的に床や壁を認識するため、場合によっては正確にトラッキングできないタイミングが生まれ、復帰するまでタイムラグが生じることもあります。これは私の実体験ですが、シビアな動きを要求されるゲームでは、ここぞというタイミングでうまく動きが反映されず悔しい思いをする場合もあります。
さらにハンドコントローラーの傾きや動きは、コントローラー本体にある複数の光模様をセンサーカメラが読み取ってVR空間に反映します。Windows MRヘッドセットに搭載されるセンサーカメラは前方(180度くらいでしょうか)を認識しているようなので、例えばコントローラーを背後に持っていくと認識できません。VRコミュニケーションアプリなどで、アバターをより自由なポーズで動かしたい時は不満に思うこともあります。
センサー外付けのアウトサイドイン方式(HTC VIVEやOculus Riftなど)は、センサーを設置する手間はありますが、Windows MRヘッドセットに比べてユーザーの動きやコントローラーの位置をうまく認識できない場合が少ないと感じます。
手軽にVRを体験するか、よりトラッキングに正確さを求めるか、購入するVR HMDの機種を選ぶポイントとなりそうです。
Windows MRで何ができる?
Windows 10にWindows MRヘッドセットを接続すると、VR空間で映画やコンサート、YouTubeの動画を視聴するといった定番ものから、特にアプリを追加することなくPCのデスクトップ画面をVR空間に呼び出して、ExcelやPowerPointなどの編集に使うといった、Windowsらしい使い方もできます(詳しくは次回以降に紹介します)。
Windows MRのメリットとして、PCスペックの必要要件が比較的低いことも挙げられます。VRが動作するPCは高性能なグラフィックスカードが搭載されたゲーミングPCというイメージがありますが、Windows MRの最低動作要件は「Intel HD Graphics 620以上のDX12に対応した統合型GPU」です(以下画像参照)。
つまり、ゲーミング性能をうたっていないビジネスノートPCでも動作できる可能性が高いです。そのため、イベントや展示会(マンションのリフォーム、仮想店舗の再現)、職業訓練(シミュレーター、トレーニング)など、よりさまざまな業種、ジャンル、サービスで手軽にVRを活用する機会が増えることを業界では期待されています。
さらに世界最大のゲームプラットフォーム「SteamVR」にも対応しているので、 ハイエンドのゲーミングPCを用意すれば、HTC VIVEと同じゲームがプレイできます。これは個人ユーザーにとってもかなり大きなメリットです。
いかがでしたでしょうか。次回はMRコンテンツを実際に体験してレポートをしてみたいと思います。
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