欧州の一部のWikipedia、EUの著作権新指令抗議で検索結果の代わりに声明文表示
欧州連合(EU)がスニペット表示に著作権料を課す条項を含む新指令案の投票を7月5日に実施する。イタリア、スペイン、ポーランドなど欧州の一部のWikipediaはこれに抗議するため、3日と4日の2日間、検索結果の代わりに抗議文を表示している。
Wikipedia創業者のジミー・ウェールズ氏のメディアWikiTRIBUNEは7月4日(現地時間)、欧州連合(EU)が審議中の新著作権関連指令「copyright in the Digital Single Market(以下「DSM著作権指令案」)」への抗議を目的にイタリアとスペインのWikipediaを3日と4日の2日間、利用できないようにしていると発表した。
本稿執筆現在、この2カ国に加えてポーランド、エストニア、ラトビア、カタロニア、メキシコ、コロンビアなどのWikipediaでも検索結果の代わりに抗議文が表示される。
独海賊党選出の欧州議会議員ジュリア・レダ氏の説明によると、DSM著作権指令案は、メディアによるオンラインコンテンツのスニペットを使う場合、メディアからのライセンス取得を義務付けるというもの。7月5日に投票が行われる。
投票で指令案が可決されれば、例えばユーザーがSNSに投稿した記事リンクで表示されるスニペット(記事のタイトル、サムネール画像、記事概要など)もライセンス対象になり、著作権料の支払いが必要になる可能性がある。
EUの意図は、欧州のパブリッシャーがスニペット表示によって収益を得られるようにすることで、著作権料を課す対象は(ユーザーではなく)Google、Facebook、Twitter、Pinterestなどのプラットフォームだ。こうしたプラットフォームは、リンクで自動的にスニペットが表示されるようにしている。
レダ議員は、Facebookなどの大手プラットフォームは著作権料を回避するために、ユーザーが欧州のパブリッシャーのコンテンツのリンクを投稿しようとする際、以下のような警告を表示するだろうとしている。
レダ議員はさらに、プラットフォームが信頼できるメディアのコンテンツのスニペット付きリンクをフィルターすれば、スニペットの著作権料を要求しないであろうフェイクニュースがプラットフォーム上に増加する可能性があるとしている。また、スニペットなしのリンクはライセンス対象にはならないが、スニペットのないリンクはどこに飛ぶか分からないので危険でもあり、スニペットの制限はリンク行為そのものの制限を意味するともしている。
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