AppleのクックCEO、プライバシー国際会議で“個人データの武器化”に警鐘
Appleのティム・クックCEOがEUのデータ保護プライバシー・コミッショナー国際会議(ICDPPC)で基調講演を行い、企業が集める個人情報が悪人や政府による武器に変えられていると主張した。同氏はEUのGDPRを支持し、米国を含む世界がこれに追随するべきだと語った。
米Appleのティム・クックCEOは10月24日(現地時間)、ベルギーのブリュッセルで開催中の第40回データ保護プライバシー・コミッショナー国際会議(ICDPPC)で基調講演を行った。今回の会議のテーマは「倫理について論議する:データ志向ライフにおける尊厳と尊敬」。
クックCEOは機会があるごとに、ユーザーの情報をマネタイズするのは間違っていると主張してきた。今回も個人データを企業が集めることで、それが“rogue actors”(悪い人々)に悪用されると警鐘を鳴らした。
「われわれの生活を改善するためのプラットフォームとアルゴリズムは、同時に人間の悪の傾向を拡大することも可能だ。悪い人々だけでなく、国家政府までがユーザーの信頼を社会の分断や暴力の誘発などのために悪用している。この危機は現実だ」(クック氏)
「われわれの個人情報は軍事的効率で武器化されている。情報は個々には無害なものだが、注意深く収集、合成され、取引され(武器として使われて)いる」と主張する。
クック氏は具体的な事例は挙げなかったが、米FacebookのCAスキャンダルを想定しているとみられる。
同氏はEUの「General Data Protection Rules(GDPR、一般データ保護規則)」を支持し、「米国を含む世界の他の地域もEUに追随する時が来た。Appleは米国での包括的なプライバシー保護法を全面的に支持する」と語った。同氏はプライバシー保護法の柱として以下の4つを挙げた。
- 企業による個人データ収集の縮小あるいは中止
- 個人が自分のどんなデータが集められ、どう使われているかを知る権利
- 個人が自分のデータを修正あるいは削除する権利
- 個人データの安全
ICDPPCにはこの後、米Googleのスンダー・ピチャイCEOも動画メッセージで参加した。(Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOも参加したはずだがまだ動画は公開されていない。)
ピチャイ氏はメッセージで、「Googleはプライバシーを重視しており、ユーザーが自分のデータについて管理できるように改善を進めている」と語った。Googleは同日、各種サービスにおけるユーザーデータ管理方法の改善を発表した。
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