「Splatoon 2」をディープラーニングで攻略してみなイカ? 2018(前編)(3/3 ページ)
「ガチエリアは『塗り』と『キル』どちらが重要なのか」「編成事故は存在するのか」など、人気ゲーム「Splatoon 2」のファンの間で感覚的にいわれていることをデータサイエンティストが検証。
データ分析をする前の処理として、ローデータから不要なデータを除去するとともに、各統計量を変数として追加しました。「勝利フラグ」(勝ちなら1、負けなら0)、ルール(ガチエリア、ガチホコバトル、ガチヤグラ、ガチアサリ)、味方の合計キル数、敵の合計キル数などの変数を分析に用います(下記図)。
まずL2正規化によるロジスティック回帰を用いて、勝利フラグを目的変数として、ルールごとに各変数の重要度を算出してみます。
ガチエリアで、勝利確率を予測するロジスティック回帰を行った結果、偏回帰係数の値・オッズ比が上位だったもの、下位だったものは以下の通りでした。オッズ比が高い変数を大きくすればするほど、勝利の確率が上がります。ちなみに、クロスバリデーションを行って検証しており、予測精度は84.7%となりました。
最も偏回帰係数・オッズ比が高くなったのは「味方・敵の合計キル数の差」(味方の合計キル数−敵の合計キル数)でした。次いで「敵チーム最低デス数」「味方チームの最高キル数」「味方の合計キル数」とキル関係の指標が続き、5番目に「味方・敵の合計塗りポイントの差」となりました。
つまり、ガチエリアは、特定範囲のエリアを塗って占領し、維持し続けるというルールではありますが、塗るという行為以上に敵をキルすることが重要という結果になりました。
反対に、最もオッズ比が低い(偏回帰係数がマイナスであり、この数値が高いとむしろ勝率が下がることを意味する)ものは「敵チームの最低キル数」「味方チームの最低デス数」でした。興味深いのは、その次が「味方チームの後衛人数」となっていることです。前線を維持できず、塗ることに不向きなブキばかりだとそれはそれで不利(編成事故が起こるかもしれない)ということでしょうか。
もちろん、敵を圧倒する“無双するチャージャー”が1人いれば、ガチエリアでは脅威になり、実際にガチエリアのプレイヤーランキング(ウデマエX)でも上位にチャージャーが入っていることには留意しておきます。
上記は、あくまでそれぞれの要因の重要度を検証したものですが、実際の勝敗には、その組み合わせが複雑に絡んでいます。塗りを重視して勝つにはどうしたら良いか、あるいは、キル数と塗りのバランスをどのように考えるべきか、などの考察も必要かと思われます。後編では、さらに「勾配ブースティングツリー」「Deep Learning」を用いて詳しく検証します。
他ルールの結果は?
その前に、他のルール(ガチホコバトル、ガチヤグラ、ガチアサリ)のロジスティック回帰の結果も記しておきます。
ガチホコバトルは、ガチエリアと異なり「味方・敵の合計塗りポイントの差」が最もオッズ比が高くなりました。次いで「味方チームの最低塗りポイント」「味方の合計塗りポイント」となります。キル数は重要ではありますが、それ以上にガチホコを運ぶルートの確保が重要ということでしょうか。
8番目に「味方チームの中衛人数」がランクインしていることにも注目です。敵のガチホコの進行を止めるために、短射程よりも中射程がいることが望ましい可能性がうかがえます。
逆に、最もオッズ比が低かったのは「味方チームの後衛人数」という結果に。長射程ばかりが多いと、前線を上げることができず、また不意に進行してきた敵のガチホコを止めることが難しい、ということなのかもしれません。
その他、ガチヤグラ、ガチホコの結果も載せておきます。それぞれ特徴がうかがえて興味深いです。ガチアサリは試合のデータ数が少なく、勝敗予測精度が他ルールよりも低い点にご注意ください。
ニュース解説番組「NEWS TV」で記事をピックアップ
ITmedia NEWS編集部がYouTubeでお届けするライブ番組「ITmedia NEWS TV」で、この記事を取り上げています。ぜひ視聴・チャンネル登録をお願いします。
関連記事
- 「Splatoon 2」をディープラーニングで攻略してみなイカ? 2018(後編)
「ガチエリアは『塗り』と『キル』どちらが重要なのか」「編成事故は存在するのか」など、人気ゲーム「Splatoon 2」のファンの間で感覚的にいわれていることをデータサイエンティストが検証。 - 「開発の丸投げやめて」 疲弊するAIベンダーの静かな怒りと、依頼主に“最低限”望むこと
AI(人工知能)開発を丸投げするクライアントの「いきなり!AI」に苦悩するAIベンダー。データサイエンティストのマスクド・アナライズさんに、AI開発現場の実態と、依頼主に最低限望むことを聞いた。 - 「AI開発ミステリー 〜そして誰も作らなかった〜」 とある大手製造業の怖いハナシ
“AIベンチャーで働きながらネットで情報発信しているマスクマン”こと、マスクド・アナライズの新連載がスタート。AI開発のリアルな現状をお届けします。第1回は、AI導入に踏み切ろうとするも、ミステリー小説並の恐ろしい事態になってしまうある大手製造業のお話です(恐らくこの物語はフィクションです)。 - なぜ日本は人工知能研究で世界に勝てないか 東大・松尾豊さんが語る“根本的な原因”
なぜ日本はAI(人工知能)の研究開発で米国や中国に勝てないのか。ディープラーニング研究の第一人者、東京大学の松尾豊特任准教授が日本の問題点を解説する。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.