AIが「バブル崩壊味のチョコ」を考えたら“とがった味”に 「おいしく作るのが難しかった」――制作者の苦悩(2/2 ページ)
NECのAI技術を活用して作った「あの頃は CHOCOLATE」は、ある年のムードを味で再現したチョコレートだ。どの味も「とがったものばかり」でレシピ制作は困難だった――レシピ制作者に聞く。
フレーバーありきのチョコレート作りは「初めての挑戦」
「普段はカカオ豆の特徴に合わせてチョコレートのフレーバーを決めるが、今回はその逆。フレーバーが最初に決まっていて、それに近いものを再現するのは、初めての挑戦だった」と、ダンデライオン・チョコレート・ジャパンの伴野智映子さん(チョコレートプロダクションマネージャー)は明かす。
しかも、選ばれた5年のレーダーチャートはどれも個性的。「バブル崩壊は、苦くて酸っぱくて苦しい感じの味。そのままではとても『おいしそう』と思えない。いかにチョコレートとしておいしく食べられるようにするか……。考えるのはとても難しかった」という。
レシピ制作は、ダンデライオン・チョコレート・ジャパンが蓄積してきた商品開発データを参考に、各年のフレーバーに向いたカカオを選ぶところから始めた。例えばバブル絶頂味に使ったカカオは、華やかなフレーバーのホンジュラス産。「満場一致でこれを使おうと決め、口に入れた瞬間バブルの華やかさが感じられる味に仕上げた」(伴野さん)
記者も試食させてもらったが、口に入れると花のような香りがふわりと広がった。味は甘くまろやかで、後からほんのりと苦みや酸味も感じられる。しかし、それぞれのチョコレートのおいしさは食べる順番によっても変わるという。
全種を試食したNECの橋本和泉さんは「バブル絶頂味の後に崩壊味を食べると、苦すぎて飲み込めなくなった」と話す。「最初にバブル崩壊味を食べた時は、後を引く苦さで、お酒に合いそうだと思ったが、絶頂味と食べ比べると辛かった。絶頂と崩壊の落差がよく分かる」(橋本さん)
完成したチョコレートは、ダンデライオン・チョコレート・ジャパンの店舗(ファクトリー&カフェ蔵前、京都東山一念坂店)やオンラインショップで販売予定。単品は1620円で、5種類入りのアソートボックスは3240円(いずれも税込)。伴野さんのおすすめは「1987 魅惑のバブル絶頂味」と「2017 イノベーションの夜明け味」という。
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