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「ビッグデータ」が「notデータ」でAIマジギレ!? “残念なAI導入”を卒業するにはマスクド・アナライズのAIベンチャー場外乱闘!(3/4 ページ)

ハロウィーンのお祭り騒ぎのように、AI(人工知能)やロボットブームに沸く日本。「とりあえずAIをしたい」という相談に悩まされてきたAIベンダー担当者が、AIが活用できる分野を紹介する。

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 これをマスターするには、師匠の元で空気椅子をしながら頭と手足に水の入った茶碗を乗せる修行は不要ですが、工場に長年勤務して経験を積む必要があります。こうした「勘と経験」による不良品検知や故障予測といった分野も、今後AIの活用が期待されます。もちろん、以前掲載した記事のような「計画なき導入」による「丸投げ」では、失敗しますが。

 東京大学の松尾豊特任准教授も「ディープラーニングが人間の眼となる」と話しています。また、製造業、農作業、食品加工などの手作業が必要な分野における、ディープラーニングの活用を提唱しています。

 熟練技術者のノウハウとディープラーニングの組み合わせにより、高品質・短納期・低コストを満たしながら多品種少量生産を実現できれば、日本のお家芸復活につながるかもしれません。しかしながら、手間と時間もかかるので、まずは単純な業務からの置き換えが現実的でしょう。

コンビニ店員はAIより人間

 ヒト型ロボット「Pepper」を受付ロボットとして導入している「はま寿司」では、「定型的かつ例外が少ない繰り返し作業」「店舗入口付近における座席案内という限定された業務」という条件を満たすので、AI(ロボット)でも問題なく作業がこなせます。この場合はPepperという既存製品が使えることと、費用対効果が見込める点でメリットがあります。

 複雑なルールで例外的な対処も多い業務をAIで代替すると、難易度と費用が跳ね上がるため、人間の方が安上がりでしょう。コンビニ店員のように複雑な仕事は、AIよりも最低時給+50円で人間を雇う方がコスト的には有利です(人手不足を外国人でカバーできるかは別問題ですが……)。

 また、24時間365日の稼働を求められる場合や、同じ環境で同じ作業を繰り返し行う業務、人材の確保が難しいものなども、AIやロボットの置き換えが推進されます。具体的には、倉庫や物流センターなどです。

 物を運ぶロボットは決められたルールに沿って動けばいいので、敷かれたレールに反発して盗んだバイクで走り出す尾崎豊スピリッツは不要です。屋内なら明るさや天候に左右されず、飛び出す子供や障害物もなければ、通掛聞造さんに声をかけられる事もありません。

 一般道路の自動運転に求められる高度な技術や安全性は不要なので、「同一環境での同一作業」は現在のロボット技術でも代替えしやすい分野です。各地に点在する設備監視など、保守点検が必要な人材の削減目的では、IoTにおけるセンサー技術やドローンなど別の機器を併用した形になるでしょう。

AIに不向きな仕事、ありがちな失敗

 逆に、AI導入が向かない事例は「製品単価や利幅が低いもの」「データ収集コストが高い業務」「人間による最終判断が必要なもの」「説明責任を求められるもの」などがあります。

 1本10円のうまい棒で、不良品率を下げるAIに数億円をかけるのはやりすぎです。山奥にある設備の点検となればデータを集めるだけで大変ですし、3年に1度故障する可能性はあるが大した影響はない機械に、あえてAIを導入する必要はありません。原子力発電所と田舎のドライブインにあるうどん自販機では、同じ機械でも問題発生時における判断の重大性や説明責任が異なります。

 また、AI導入における重要な点として、準備段階における業務フローの見直しが必須です。社内業務の洗い出しや、コンサルタントによる助言などを受けた上で、「AIでなければ解決できない問題」か判断しましょう。それをやらずに「とにかくAIでなんとかする」は、失敗フラグでしかありません。

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