フィンテックスタートアップのインサー(東京都目黒区)は1月16日、米VISAや米Mastercardの非接触型決済に利用する「NFC Type A/B」に対応する独自SDカードなどを提供するプロジェクト「INCIRプロジェクト」を発表した。2020年の東京五輪など、インバウンド増加に伴うNFC Type A/B決済端末導入店舗の増加見込みから、Type A/Bを用いたタッチ決済の利用シーンに商機を見いだす。
インサーは、シンガポールのフィンテックスタートアップであるGoouteの子会社として2017年3月に設立。Gooute CEOである横地俊哉さんがインサーのCEOを兼任する。ビックカメラグループのラネットや、日立ハイテクノロジーズ、慶應義塾大学SFC研究所、NECパーソナルコンピュータ、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムなどの企業や大学と産学連携で2019年内の事業化を目指す。
INCIRプロジェクトは、NFC Type A/Bによる非接触型決済に対応する「INCIR CARD」(インサーカード)、インサーカードの管理や決済元となるクレジットカード情報を管理するスマホアプリ「INCIR WALLET」(インサーウォレット)、インサーの決済システムを使って商品やコンテンツを販売できるメディアプラットフォーム「INCIR HOME」からなる。
日本からプロジェクトを始めるが、国内はType A/Bと互換性がないFelicaが主流であることから、概念実証的な意味合いもあるという。日本の後、シンガポールやアジア、世界各国へ提供範囲を広げたい考え。
日本でType A/B決済端末をすでに導入している企業は、ローソン、サブウェイ、マクドナルドなど数えるほど。19年春にはイオングループ店舗や、JapanTaxiなどが対応する予定。
SIMフリースマホをSDカードでタッチ決済対応に
インサーカードにはSDカードタイプのもの、スマホとBluetooth通信して非接触型決済に対応する専用カードタイプ、クレジットカードタイプの3種類がある。
SDカードは従来通りストレージとして写真などデータを保存でき、さらにNFCチップと決済情報を安全にやりとりするための「セキュアエレメント」を内蔵する。このSDカードを、SDカードスロットがあるSIMフリーのAndroidスマホに挿入すると、スマホ本体にNFCやおサイフケータイの機能がなくてもVISAやMastercardのタッチ決済に対応できるようになる。なお、Felicaを利用する「Suica」などのタッチ決済には対応できない。
決済のためのクレジットカード登録などにはスマホアプリが必要だが、タッチ決済機能はあくまでSDカードにあるため、スマホを買い替えた際にはSDカードの差し替えとアプリ設定で、機能を丸ごと引き継げる。
SDカードの値段は未定だが、「SDカードの販売からは利益を上げるつもりはない。普通のSDカードとあまり変わらない価格で提供するつもりだ」(横地CEO)。
独自プラットフォームでユーザー行動履歴をマネタイズ
ビジネスとしては、インサーホームで得られるユーザーの行動履歴の分析によるマネタイズを見込む。
インサーホームは、企業や個人がコンテンツ配信元として自由に登録できるECプラットフォーム。配信を受ける一般ユーザーは、インサーウォレットや同社のオンライン決済サービス「INCIR PAY」(インサーペイ)を通して商品やデジタルコンテンツを購入できる。
1月末からビックカメラと連携
まずは1月末から、ビックカメラで配布するフリーペーパーの格安スマホ情報誌「スマチョク」と連動し、インサーカードのターゲットとなるSIMフリーAndroidユーザーへの認知向上を図る。
5月以降にインサーホーム、秋以降にインサーウォレット及びインサーカードの提供開始を見込む。
米VISAや米Mastercardなどクレジットカード会社とは、現在協議中としており、「秋までに形にする」(横地CEO)という。
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