「長期投資がリスクを減らす」のウソ
長期、積み立て、分散は昨今の資産運用のトレンドです。それぞれインデックス投資をすすめるにあたって正しいことなのですが、注意したいのは「長期」。長期投資はリスクを減らすと言われますが、いったい何のリスクを減らすのでしょうか?
資産運用の話では、最近「長期、積み立て、分散」という話がよく出てきます。そして、「長期間運用すると、リスクを減らすことができます」と必ず出てきますね。しかし、これをうのみにすると、あれ? こんなはずじゃなかった……ということにもなりかねません。
「長期投資はリスクを減らす」と聞くと、長い年月をかけて投資を続ければ、誰もが同じような投資結果になっていくように感じる人がいると思います。短期間の投資では、得する人も損する人もいるけど、長期投資なら誰もが同じように資産が増える……。こんなふうに思っているとしたら、これは間違いです。
長期投資は何の「リスク」を減らすのか? を解説
この記事では、実際のシミュレーションをもとに、長期投資で変わるリスクとは何なのかを見ていきます。
リスクがリターンを減らす
最初に100万円を世界の株式に分散投資して20年運用した場合を考えてみましょう。海外株式の年平均リターンを仮に7%とすると、これは単純に考えれば100万円が毎年7%ずつ増えていくように思えます。
100万円 x 1.07 x 1.07 x 1.07 x……と20年にわたって増えていくと、386万円になるはずです。この数字を見て、「そうか386万円まで増えるのか」と思ってはいけません。株式のリターンは確かに7%ですが、それは平均した場合の話だからです。実はものすごく増える年と減ってしまう年だってあり、この値動きの激しさのことを、投資の言葉では「リスク」といいます。下がることだけでなく、上がることもリスクです。あくまで上下に動くことをリスクといいます。
実はこのリスクがくせ者です。定期預金のように、毎年確実に7%増えていくのならば先の計算の通りになるのですが、上がったり下がったりの値動きというリスクのせいで、実際の資産は思ったように増えないのです。
「平均的」な投資結果は、平均値を下回る
では明治安田アセットマネジメントの投資シミュレーションツールを使って、リスクの違いによって投資結果がどのように変わるのかを見てみましょう。年平均リターンを7%とおいて20年間運用した場合に、資産額がどうなるのかを見ていきます。
先のように単純に計算すると、100万円が毎年7%ずつ増えていくなら、386万円になっているはずですね。ところが、リスク10%で計算した評価額は354万円と32万円も少なくなっています。
これはなぜなのでしょうか? 実はここでいう評価額は「投資結果が平均的な場合」を指しているからです。ここに投資した人が100人いたとして、投資結果順に並べたとします。ちょうど50位の人がどのくらいまで資産を増やしたかを表しているのが「平均的な場合」です。統計的には「中央値」といいます。
一方で、平均値は386万円です。平均値のほうが大きいのは成績上位の人の結果が全体を引っ張り上げたからです。
たまたま上振れした(上方のリスク)場合は599万円まで増加する可能性が10%ありますし、なんと元本割れする可能性も0.1%あるのです。長期投資で思ったような結果を出したいと思った場合、「最も平均的な」結果だったら、最終的な運用結果は平均値よりも低くなってしまうことに注意が必要です。
長期投資は何の「リスク」を減らすのか? を解説します。
リスクはリターンにどう影響するのか、そしてそれが長期にわたるとどうなるのかを、シミュレーション結果を元に解説していきます。
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