「Huawei独自OS」は非現実的か “オープン”なOSと“クローズ”なアプリの関係(3/3 ページ)
一部メディアで報じられた、「Huaweiが独自OSを開発する」という話。その実現可能性を考察する。
Huaweiの端末には、「EMUI」と呼ばれるユーザーインタフェース(UI)が搭載されているが、これもUIの域を超えた、いわばOSと呼べる存在だ。昨年11月に筆者が取材した、Huawei端末のソフトウェア開発を率いる王成録氏は、このEMUIを「名前こそUIだが、実態は完全なOSといえる」と語っていた。
王氏によると、EMUIはAndroidに大きく手を入れ、「ドライバだけでなく、Linuxのカーネルや抽象化層にまで最適化と修正を加えている」という。逆に、こうしたHuaweiのカスタマイズが、標準のAndroidに採用されるケースも増えている。Huawei自身がゼロからOSを作り上げる可能性も捨てきれないが、既存のAndroidアプリとの互換性を考えると、AOSPの利用が最適解のように思える。
Huawei独自アプリストアには「Google Chrome」も
とはいえ、その先に問題になってくるのが、アプリのエコシステムだ。Googleのサービスには当然ながら、アプリ配信ストアの「Google Play」も含まれる。GMS認証なしの独自OSでは、これが利用できない。ただし、Huawei自身も「App Gallery」と呼ばれるメーカー独自のストアを用意しており、アプリの配信を行っている。日本でも、EMUI 9.0以降のSIMフリー端末ではApp Galleryが利用可能だ。中身を見ると、LINEやTwitter、Facebookに加え、なんとGoogle Chromeなどまで配信されている。
さすがにアプリの数自体はGoogle Playに遠く及ばないが、主要なアプリに関しては、ある程度App Galleryだけでそろえられる。このApp Galleryへのアプリ提供が「Huaweiへの輸出」と見なされるおそれもあるが、例えば運営元を同社と関係のない会社に移した上で、Huawei製以外の端末にも開放する“三店方式”を取れば、ある程度、問題は回避できるかもしれない。
ただし、これらはあくまでも技術的、制度的に可能というだけの話で、実行に移せるかどうかは、五分五分といったところだろう。いくら必須アプリがそろっているとはいえ、App Galleryの中身はGoogle Playに比べ見劣りするのも事実だ。年間2億台以上のスマートフォンを出荷しているHuaweiが本腰を入れれば、開発者が集まる可能性はあるものの、アプリの中には調整しなければうまく動作しないものも出てくるだろう。“第3のOS”についていくかどうかの判断は分かれそうだ。
先行きは予測困難
仮にOSを内製できたとしても、代替品がない基幹部品を入手できなくなれば、スマートフォンの開発は断念せざるを得なくなる。エンティティリストに登録されたばかりの現段階では、その影響範囲を見極めるのが難しいはずだ。Huaweiの発言の数々は、米国から妥協を引き出す駆け引きであるという見方も否定できない。政治や外交などの不確定要素が多く、予測が難しいため、今後も状況が急転する可能性はありそうだ。
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