旧友からLINEで「飲もう♪」……これってマルチ商法? 記者の“奇妙な体験”(2/5 ページ)
近年、LINEなどのSNSを活用した「マルチ商法」の勧誘が増えている。筆者も、疎遠だった友人からLINEで飲み会に誘われ、参加した結果、もうけ話を持ちかけられた経験がある。本記事では、筆者の体験談を基に、あやしい勧誘の特徴を探る。
あやしい勧誘の入り口
飲み会から約3週間後。筆者はサヤカと都内のファミリーレストランにいた。お互いの仕事について話したり、過去のクラスメイトの近況を聞いたりと、当初は他愛もない話をしていた。
だが、約30分が経過したころ、サヤカがふと問いかけてきた。「そういえば、フリーランスになりたいって思わない?」と。筆者は「興味はゼロではないけど、独立しても稼げる自信がない」と正直に答えた。今思えば、この答えによって勧誘のターゲットに設定されたのだろう。
するとサヤカは、「ちょうどよかった! サークルの先輩で、フリーランスを目指しているセイヤさん(仮名)が偶然近くにいるみたいだから呼ぶね!」と目を輝かせ、先輩にLINEを送った。
しばらくして現れたセイヤは、30代前半の清潔感ある営業マン。席に着くと、自己紹介もそこそこに、とあるビジネス書を熱心に勧めてきた。
「独立したいって聞いたけど、この本を読んでみたら? トオルさんのオススメで、おカネとの付き合い方や、稼ぐために必要な基礎知識が書いてある。オレも独立の準備の一環で読んでいるけど、すごくためになる。人生変わるかもよ」(セイヤ)
サヤカは「私も読んだけど、この本は読む価値あるから!」と繰り返し、「読んでくれると、トオルさんに会わせてあげる。独立した後の稼ぎ方に詳しいから聞いてみなよ。起業してて、めちゃめちゃ忙しい人なんだけど、時間をもらえるよう頼んでみるね」という。
運よく先輩が近くにいるわけがないし、話の展開が不自然すぎる。旧友のサヤカを信じたい気持ちはあったが、筆者はこの時点で、何らかの勧誘にあっていることを悟った。だが、マルチ商法なのか、カルト宗教なのか、組織の実態を知りたい気持ちが湧き、しばらく接触を続けることにした。
「ESBIクワドラント」とは
食事を終えた後、筆者は早速例の本を買った。書名などの詳細は伏せるが、その中には「会社員として働くよりも、自分で事業に取り組む方が豊かになれる」といった内容が書かれていた。その主張の根幹をなすのが「ESBIクワドラント」なる理論だ。
「ESBI」とは労働者のカテゴリーを指しており、Eは「Employee」(労働者)、Sは「Self Employee」(自営業者)、Bは「Business Owner」(ビジネスオーナー)、Iは「Investor」(投資家)の略だ。
E→S→B→Iの順番で時間的・経済的余裕があり、EとSは労働収入しか得られないが、BとIは権利収入(不労所得)を得られる点が異なる。経済的に豊かになるには、E・SからB・Iに働き方をシフトする必要がある――というのが筆者なりの理解だ。この理論自体は納得がいくもので、それなりの勉強にはなった。
だが、本を読むだけでは組織の目的は分からず。筆者はトオル氏との面会を試みるべく、読み終えた旨をLINEでサヤカに報告した。すると、「本当に特別だよ」と念押しした上でトオル氏に会う約束を取り付けてくれた。「せっかくの時間だから、最大限に有効活用してね!」とのことだ。
関連記事
- 大阪で“ヤミ民泊”4200件撃退! 悪質業者と闘い続ける「撲滅チーム」の正体
東京に比べて家賃が安いことや、観光地が多いことから、大阪は営業許可がないまま客を泊める“ヤミ民泊”の温床になっている。この事態を改善するため、大阪市は警察OBなど約70人を集めた「違法民泊撲滅チーム」を昨夏に立ち上げた。今回は、同チームの現地調査に同行取材を実施。現状について、トップへのインタビューも行った。 - 「お友達になりませんか」――SNSきっかけの投資勧誘に注意 消費者庁
見知らぬ人からSNSで「お友達になりませんか?」とメッセージが届き、実際に会うと株式投資の勧誘を受けた――そんなトラブルが相次いでいると消費者庁が注意喚起。 - 「水素水を飲むだけでダイエット効果」 広告に根拠なし、消費者庁が3社に措置命令
「水素水を飲むだけで、ダイエット効果がある」――そんな広告内容が景品表示法違反に当たるとして、消費者庁が水素水を販売する3社に措置命令。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.