旧友からLINEで「飲もう♪」……これってマルチ商法? 記者の“奇妙な体験”(3/5 ページ)
近年、LINEなどのSNSを活用した「マルチ商法」の勧誘が増えている。筆者も、疎遠だった友人からLINEで飲み会に誘われ、参加した結果、もうけ話を持ちかけられた経験がある。本記事では、筆者の体験談を基に、あやしい勧誘の特徴を探る。
大富豪トオル登場
約1カ月後、トオル氏はカフェのテーブル席で筆者を待っていた。「君のことはサヤカから聞いているよ」。年齢は40代前半だろうか。髪をジェルでツンツンと立てたこの男は、筆者が着席するやいなや、怒涛(どとう)の勢いで語り始めた。
「私はかなりの稼ぎがあり、毎日おいしいものを食べ、時間的にも金銭的にもゆとりのある生活をしている。育児と親孝行にもかなりの額を使っている。投資もしており、マンションは一棟買いが基本だ。君はライターらしいけど、それで生き残れるかな?」
サヤカは口を挟まず、横で「うんうん」とうなずいている。
「私が豊かになったきっかけは、大学時代の友人に誘われて副業を始めたこと。企業に搾取されるのではなく、稼ぐ仕組みを会社の外に持つことは重要だ。結局、飲食大手で10年ちょっと働いた後に辞め、今は小売店を経営している。独立や起業、副業をしたい若者の相談にも乗っていて、講演やセミナーの実績もある。豊かになるために、まずは一緒に仕事をしてみないか? 一緒に『E・S』から抜け出して『B・I』を目指そう」
何とも漠然とした話だ。副業の内容や商材が何なのか、詳しく聞いてもトオル氏は「質の高い商品を売っている」などとしか教えてくれない。小売店の名は聞くことができたが、著名な店舗ではなかった。
誘いに対し、筆者はこう返した。「すみません、本気で独立したいわけじゃなくて、今の会社でいいかなと思っています。サヤカとの雑談で、軽い気持ちで口にしただけです」
ココイチのカレーを食べて何が悪い?
すると、トオル氏はイラっとした表情を浮かべつつ、こう聞いてきた。「君が今日食べた昼食と、人生で一番おいしかった食べ物を話してくれ」
「今日はCoCo壱番屋(ココイチ)のカレーを食べました。おいしかったのは、銀座の料亭で食べた鳥料理です」(筆者)
すると彼は、被せ気味に怒鳴り始めた。「私と一緒にビジネスをやれば、もう二度とココイチのカレーは食べなくていい。毎日のように銀座で鳥料理が食べられる。そうなりたいのが本音だろ? 『B・I』よりも『E・S』を選ぶ意味が分からない。本当にあの本を読んだのか?」と。
興味本位で会ったとはいえ、怒鳴り続けられると腹が立つし、周囲の客にも迷惑が掛かる。筆者は「取りあえず今日は失礼します」と告げて席を立ち、店を出て駅に向かった。サヤカも足早に付いてくる。「トオルさんは何をしている人なの?」。率直に彼女に聞いた。
「トオルさんが売っているのは、海外から仕入れたオーガニックな食品や日用品。会員制で、入会しないと買えないんだ。起業のコツも教えてもらえて、私もセイヤさんも弟子なの。他にも数千人の弟子がいる。最初は新興宗教みたいだと思ったけれど、弟子になったら人生が明るくなった。いつかは今の会社をやめて、これ一本で生きることが私の夢」。うっとりした表情でサヤカはこう話した。
「時間がある時に、お金持ちになったら叶えたい夢を書き出してみなよ。気持ちも変わると思うよ」「考えとくね」と言葉を交わし、改札で別れた。それから数カ月がたったが、サヤカとは一度も連絡を取っていない。
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