旧友からLINEで「飲もう♪」……これってマルチ商法? 記者の“奇妙な体験”(4/5 ページ)
近年、LINEなどのSNSを活用した「マルチ商法」の勧誘が増えている。筆者も、疎遠だった友人からLINEで飲み会に誘われ、参加した結果、もうけ話を持ちかけられた経験がある。本記事では、筆者の体験談を基に、あやしい勧誘の特徴を探る。
国民生活センターに相談してみた
この“奇妙な体験”は一体何だったのか。詳細を知るべく、筆者は国民生活センターを訪問し、取材を兼ねた相談を行った。
「あなたが勧誘されたのはマルチ商法の可能性がかなり高いですが、断定はできません。他のビジネスの可能性も少しあります」と解説してくれたのは、日頃から消費者の相談に乗っている小池輝明さん(相談情報部 相談第2課 主事)。
マルチ商法(連鎖販売取引)とは、とある組織の会員が、他人に商品の購入や新規入会をすすめ、購入・入会につながった場合にマージンを得る――という取引を指す。健康食品や日用品のほか、化粧品や浄水器、情報商材なども“定番商品”だという。
ただ、連鎖配当のみによる利益獲得を目指す「ねずみ講」(無限連鎖講)とは異なり、マルチ商法は犯罪ではない。トオル氏のように成功し、数千万円単位の年収を稼いでいる人は実在する。その半面、失敗するリスクも大きく、高額な入会金を支払ったものの、マージンを得られず困っている人も多いのだ。
「何人紹介できる?」と聞かれるケースも
今回、筆者は商材の説明を受け、「一緒にビジネスをしよう」などと誘われた。にもかかわらずマルチ商法だと断定できないのは、友人・知人に関する情報を詮索されなかったためだ。
小池さんによると、マルチ業者は利益を増やすために組織の拡大を重視しており、勧誘の時点で「他の友達も連れてこれる?」「何人紹介できる?」と聞いてくる例が多いという。紙とペンを渡され、紹介できる人を書き出すよう要求された人や、組織図を見せられ、「入会した場合、君の立場はここだけど、下に何人用意できる?」と問われた人もいるとのことだ。
「話す中で、組織に入る意思が弱いことが伝わってしまい、本題に踏み込まずに様子を見ながら勧誘していたのでしょう。組織は何人も並行して誘っているので、見込みがない人にムダな労力をかけないのです」(小池さん)
SNSで増える勧誘
SNSであやしい勧誘を受けて困った経験があるのは筆者だけではない。国民生活センターには昨今、SNS経由でマルチ商法に誘われた結果、「断り切れず入会したが、辞めたい」「商品を返品したい」という相談が増えており、18年度は09年度(112件)の約10倍に当たる1186件が寄せられた。SNS以外で勧誘された人も含めると、18年度は1万405件の相談があった。
他の多数の相談者も、疎遠だった友人からLINEで飲み会に誘われたり、食事やお茶の際に先輩が偶然現れたり、“すごい人”を紹介されたり――といった出来事を経験しているという。「頻繁に耳にする手口です」と小池さんは明かす。
筆者がトオル氏に怒鳴られたように、組織側が厳しく接してくることもポピュラーな手口だそうだ。小池さんは「怒ることで委縮させ、会話を自分のペースに持ち込むための手法です。罪悪感を抱かせた上で意見を言うと、相手に受け入れられやすい点を突いています。セミナーなどにターゲットとなる人を呼び、壇上から“ダメ出し”するケースも聞いています」と説明する。
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