ラジオの気象番組、AIで原稿作成から読み上げまで完結 NHKが公開:技研公開2019
NHK放送技術研究所が「技研公開2019」で、AIの活用でラジオの気象予報番組を自動作成する技術を披露した。
NHK放送技術研究所は5月28日、AI(人工知能)を活用してラジオの気象予報番組を自動生成する技術「AIアナウンサー」を報道陣向けに公開した。読み上げ原稿の作成から実際の読み上げまでを自動化できるという。イベント「技研公開2019」(5月30日〜6月2日)で一般公開する。
アナウンサーが気象予報番組の制作時に行っている作業を自動化する。気象番組に登場するアナウンサーは、単に原稿を読み上げているわけではない。気象台から送られてくる予報データやアメダス(自動気象データ収集システム)のデータをもとに、番組の長さと情報の優先順位を考えながら自分で原稿を作成し、それを読み上げているという。決められた時間を超過させることなく、余すこともなく必要な情報を伝える必要がある。
アナウンサーの原稿制作ノウハウをルール化して自動化。まず読み上げ原稿のテンプレートを作り、気象台やアメダスの情報をもとに自動で穴埋めしていく。あいさつや警報注意報、天気予報といったトピックごとに文章を作成し、重要度を加味して読み上げる順番を決定する。同じトピックでも長めの原稿と短めの原稿を用意し、その組み合わせで番組の時間にぴったりなものを作成するという。
読み上げは音声合成で行う。NHKのとあるアナウンサーの音声を約10時間分用意し、ディープニューラルネットワーク(DNN)を用いて、自然なイントネーションや間の取り方を学習させた。
3月に甲府放送局のラジオで、AIアナウンサーが自動で作成した原稿を音声合成が読み上げた気象予報番組が放送されたが、視聴者から「不自然だ」といった反応はほとんど寄せられなかったという。
実際に音声合成による読み上げを聞いてみると、確かにDNNを用いて作った音声特有の音質だと感じたが、聞き取りにはまったく支障のない、流ちょうな男性アナウンサーの声だった。
NHKの担当者は、「気象番組の自動化技術があれば、人手不足でも多くの気象番組を制作できる。関東といった大きな範囲の予報だけでなく、より詳細な町や区といった単位の気象情報を伝えるラジオ番組も作れ、細やかなサービスの提供につなげられる」と話した。
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