AI活用は検証から実用へ NECが語る“筋のいい企画”の条件(2/2 ページ)
AI活用を実用フェーズに進ませ、成果を得るにはどうすればいいのか。NECで企業のAI活用をサポートする本橋洋介氏が「脱PoC」をテーマに解説した。
狙い目は「AIを使う人が多い業務」
本橋氏は「そのAIを使う人が多いほど良い」とし、具体例としてコンビニエンスストアの発注業務を挙げた。日本フランチャイズチェーン協会が今年5月に発表した統計調査によると、全国のコンビニの店舗数は5万5824店舗(19年4月時点)。数万人に及ぶスタッフが発注業務をしていることになる。
発注業務は、過去の販売実績や気温、天候などさまざまな情報を基に需要を予測する必要があるため、従業員の経験に依存する部分が大きい。人数が多くなれば、当然個人のスキルによるばらつきも出てくる。
本橋氏は「AIによる需要予測は、経験豊富なスタッフを超えることは難しいが、不慣れな人が使う場合の予測精度を一定水準に引き上げられる」と説明する。非熟練者の数が多ければ多いほど、「わずかな改善で莫大な成果を得られる」という。
NECが技術支援をしている「セブン-イレブン三田国際ビル20F店」では、実際にAI技術を活用した発注業務支援を行っている。
価値があるかは「Excelでの簡単な分析で分かる」
本橋氏は、Excelでデータを収集し、グラフで可視化したり、簡単な分析をしたりするだけでも、その業務が価値を生み出しそうかどうかが分かると話す。「AIは既にある価値を大きくするもので、AIが完成して初めてすごい価値が生まれるケースはほとんどない」と指摘する。
さらに、実際の業務でAIを使うときのユーザーインタフェースに着目する。「AIの精度向上は後からやればいい。まずは業務で使えるかどうかや、(利用者が使いやすいような)見せ方を考える方がはるかに大事だ」(本橋氏)
本橋氏は、最後にAIプロジェクト全体を管理できる人材の必要性を述べた。データ分析やAIモデルの作成などは外注可能だが、会社ごとに異なる課題や目的に合わせた企画を考えられる、ドメイン知識を持つ人材は「全企業に必要」という。
持続的なAI活用には、人材育成や企画、ノウハウの地道な蓄積が欠かせないようだ。
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