「5Gの通信料では儲からない」 KDDI高橋社長が5Gの展開を見通し インフラを使ったビジネス創出が鍵に?
KDDIは5G通信をテーマとする同社のイベントで、5G通信サービスの今後の展開について「本格的なサービスは2022年から」などと講演した。
KDDIの高橋誠社長(高ははしごだか)は6月27日、法人向けイベント「KDDI 5G SUMMIT 2019」の基調講演で、2020年に提供を始める次世代通信「5G」を生かしたB2Bサービスの本格展開は22年ごろという見通しを語った。同社にとっては5Gインフラを使ったビジネスの創出が課題だという。
総務省は今年4月、5Gで使う周波数を携帯電話事業各社に割り当てた。KDDIは20年の商用サービス開始に向けて、既存の4Gを存続させた状態で5Gの導入準備を進めている。来春からは一部地域で5Gを使った通信サービスを本格スタートする。
その後、22年ごろには5Gの高速、低遅延、多接続といった特徴を生かしたB2Bサービスの本格的な展開を計画。KDDIは日本だけではなく各国の企業と連携しながら信頼性の高いネットワークを世界規模で展開し、多種多様な企業のグローバル事業を加速させるという。
4Gユーザーに比べて5Gユーザーのデータ使用量は3倍に 韓国の現状は?
5Gは米国や韓国で18年にいち早くサービスが始まっている。当初は対応端末をモバイルルーターなどに限っていたが、今春には5G対応スマートフォンが登場した。
高橋社長は日本より1年早く5Gの施策が進んでいる韓国の状況を知ることで、1年後の日本の姿が想像できると指摘。基調講演には韓国の通信事業者LG Uplusの崔周植(チェ・ジュシク)副社長も登壇し、韓国における5Gの現状を説明した。
LG Uplusは17年に5G関連事業を進める組織を社内に立ち上げた。18年に5G用の周波数帯をオークションで取得し、商用ネットワークを構築。19年4月には5G対応スマホを発売し、サービス提供開始から2カ月で回線契約者数が100万人を超えた。19年末には400万〜500万人に上ると予想している。
同社の新規契約者全体の約30%が5Gサービスを契約しているが、サービス開始当初は通信品質や速度に対して不満の声が上がっていたという。時間がたつにつれて通信が安定したことで、5Gユーザーは4Gユーザーに比べて3倍のデータを使うようになったという。
5Gでどんなビジネスを作っていけるか? KDDIの課題
KDDIの高橋社長は「5Gをインフラとして整備していくが、通信料自体では儲からない。5Gのインフラを活用してどのようなビジネスを作っていけるかを考える必要がある」と話す。
第1世代、第2世代移動通信システムの時代は、インフラから携帯端末までを全て自分たちで作ることができたが、今は難しい。サービスや料金などで競争し、インフラやデータの整備は5G通信を活用する関連各社が協調するなど、競争と協調の共存が必要と語った。
KDDIはスマートドローンや交通ビッグデータの解析などを含むMaaSといった分野に特化したプラットフォームに注力することも発表。5Gならではのビジネスを検討する事業者と足並みをそろえ、新規ビジネスの創出を目指す考えだ。
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