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他社とも連携、シャープが乗り越えたスマートホームの「壁」とは体当たりッ!スマート家電事始め(1/2 ページ)

シャープにスマートホームサービス「COCORO HOME」の戦略を聞いた。他社製品やサービスと連携させる共通プラットフォームを作る狙い、それを阻んでいた壁とは?

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 AI(人工知能)とIoTを結びつけた「AIoT」という独自のコンセプトをうたい、スマート家電と関連サービスを展開してきたシャープ。同社が新たに発表したのが、エアコンやテレビ、冷蔵庫など10カテゴリー、272機種を連携させるスマートホームサービス「COCORO HOME」だ。そこには日本でのスマートホーム普及に向けた壮大な構想があった。


シャープ,スマートホームサービス「COCORO HOME」では、シャープのさまざまな家電が専用アプリ一で操作できる

 COCORO HOMEでは、クラウド(シャープのAIoTプラットフォーム)を介して対応機器同士が連携する。まずは調理家電の「ヘルシオ」シリーズや冷蔵庫を含むキッチン家電と、空調機器のクラウドサービスがスマートフォン用アプリ「COCORO HOME」(iOS、Android)と連携。機器の利用履歴などからキッチン家電を使った料理メニューを提案したり、洗濯機が作業を終えるとアプリに通知が届いたりと、1つのアプリでさまざまな機器のサービスが利用できる。専用アプリは既にAndroid版を配信中で、夏にはiOS版も登場する予定だ。

シャープ
Android版のアプリ画面。登録されたスマート家電に関する情報がタイムライン形式で通知される

 機器のクラウド連携は、いくつかのステップで高度になっていく。例えば今秋には複数の対応機器を一括操作する「シーン連携」機能を実装する予定。これを使えば、毎朝外出する時間に合わせてエアコンとテレビの電源をオフにし、電動シャッターを閉めるといった一連の動きを「おでかけ一括操作」にまとめ、ワンタップで実行できる。煩雑な設定はない。機器の使用履歴をAIが学習し、アプリ側で一括操作のメニューを自動生成し、ユーザーに提案するという。


シャープの六車智子課長(IoT HE事業本部 IoTクラウド事業部 イノベーション開発部)

 当面はスマホアプリがCOCORO HOMEの司令塔の役割を担うことになるが、今後はリビングルームのスマートテレビや「ロボホン」からシャープのAIoTスマート家電を一括制御できるようになるかもしれない。同社が開発に力を入れている音声操作との連携も見どころになる。

 しかし、単独のブランドで家電を統一している家庭は少ない。複数社のスマート家電やサービスを横断的に使えなければ、本当のスマートライフは実感できないだろう。

 この点についてはシャープの六車智子課長(IoT HE事業本部 IoTクラウド事業部 イノベーション開発部)は、「今秋をめどに他社の家電機器やサービスと連携していきます」と話す。共通のスマートホームプラットフォーム上で動く、複数社の家電やサービスの状態をモニタリングできるアプリは他に例がなく、COCORO HOMEが初の試みといえそうだ。

“スマート家電版エコポイント”にも注目

 もう一つ。同社が「秋」にこだわるのは、10月に始まる経済産業省「生活空間におけるサイバー/フィジカル融合促進事業」の補助金を見据えているからだ。同事業は、対象となるIoT機器やサービスの契約者に補助金を出すというもので、2009年に省エネ家電の普及促進を目的に実施された「エコポイント」のIoT版といえる。19年10月1日から20年2月25日まで実施予定だ。

シャープ
補助金の仕組み(環境創出イニシアチブより)

 6月3日には同事業の公式サイトで1次公募採択結果が発表された。機器メーカーでは、シャープや東芝映像ソリューション、リンナイ、テルモなどが名を連ねている。補助金の名称や対象製品を見分けるロゴなどはまだ決まっていない。

 経産省が推進する同事業には、IoT機器の普及に加え、ネットワークに接続された複数の機器から消費者の利用データを取得・活用する狙いもある。個人情報を収集されることに抵抗を感じる人もいるだろうが、ユーザーにとって便利なサービスを実現するには、AIに学習させるための大量のデータが必要だ。欧米や中国に比べ、日本はスマート家電とIoT機器の発展・普及が遅れているといわれるが、いよいよ日本でも官民が協力して本腰を入れてきたというわけだ。

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