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他社とも連携、シャープが乗り越えたスマートホームの「壁」とは体当たりッ!スマート家電事始め(2/2 ページ)

シャープにスマートホームサービス「COCORO HOME」の戦略を聞いた。他社製品やサービスと連携させる共通プラットフォームを作る狙い、それを阻んでいた壁とは?

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シャープの白石奈緒樹氏(IoT HE事業本部 副事業本部長 兼 IoTクラウド事業部長)

 シャープの白石奈緒樹氏(IoT HE事業本部 副事業本部長 兼 IoTクラウド事業部長)は、「われわれが単独でGoogleやAmazonに対抗するような、“和製スマートホームプラットフォーム”を立ち上げる意図はありません」と強調する。「むしろ、現在各社が提供しているクラウドサービスをつなぎ、連携してしまう方が効率が良いという判断に至りました」(白石)

 白石氏によると、シャープは数年前からIoT関連の実証実験などに参加し、各社のクラウドサービスをつなぐために乗り越えなければならない「壁」があることに気づいたという。とくに重要なのは、機器やサービスがやり取りする「データの定義を各社で統一すること」だった。

 例えば、エアコンの室温を「エアコンの吹き出し口付近」で計るか、それとも「部屋のソファに腰掛けたときの顔の位置」で計るのかは、事業者によって異なる。白石氏は「私たちがこのことに気がつき、統一ルールを作り始めたのが、いまから約2年前です」と振り返る。

 「メーカーが、互いにどのような情報を渡せばクラウドサービスを円滑に接続できるのか、少しずつ分かってきました。その次に足りないものは、共通化したルールの上で動くプログラムを視覚化するためのユーザーインタフェース。それを今回、形にしたのがCOCORO HOMEアプリです」(白石氏)


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COCORO HOMEアプリのサービス一覧。事業者の垣根を越えて製品とサービスをつなぐインタフェースになる

 プラットフォームとしてのCOCORO HOMEは、秋にセコム、KDDI、関西電力など他社との連携を開始する予定だ。離れて暮らす家族の見守り、食材などの宅配、家事代行など、コミュニケーションや家事負担の軽減を目指したサービスを提供するとしている。

 このうちセコムとKDDIは、18年にNEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクト「IoTを活用した新産業モデル創出基盤整備事業」にシャープと共同で参画した間柄。メーカーや通信手段が異なる機器からデータを集め、各種サービスとの連携を可能にするプラットフォームの構築などに取り組んできた。前述の経産省「生活空間におけるサイバー/フィジカル融合促進事業」でも、シャープはKDIIやセコムを含む4社とコンソーシアムを組んだ。

 こうした動きは、他社にデータ定義の統一を働きかけ、いずれクラウドをつなぐための準備にもなっている。とくに総務省のような「官」が音頭を取る基盤整備事業では、競合メーカーを含めた幅広い協力関係が築ける可能性もある。

 さらに、シャープはCOCORO+サービス対応家電で培ってきた技術を「AIoTプラットフォーム」として集約し、音声対話技術と一緒に外販している。ハードウェアを持ちながら、ノウハウがないために自社でスマート化やクラウドサービスを展開できない企業をサポートするのが目的だが、いずれはそうした企業もパートナー候補になるのだろう。

 白石氏は「まずはさまざまな企業とのつながりを広げていく。それによって統一されたスマートホームのプラットフォームを根付かせたい」と話している。

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