AIを「悪の手先」にしないためにGoogleが取り組んでいること:Googleさん(2/2 ページ)
Googleが「AIの倫理原則」を発表して約1年。医療、自然保護、災害対策などでのAI活用の今を紹介するイベントに行ってきました。伝説のGoogleフェロー、ジェフ・ディーン氏が司会という贅沢。
様々な分野でのAI活用の今を紹介(ピックアップ)
この後、医療、災害対策、環境保護、農業支援、アクセシビリティ、文化保存活動と、バラエティに富む9つのAIプロジェクトを、各スピーカーが紹介。
Google Healthのプロダクトマネジャー、リリー・ペン博士は、肺がん、乳がん、糖尿病性網膜症の早期発見プロジェクトを紹介。世界のいくつかの病院と提携して機械学習システムを訓練し、精度を高めています。
環境保護については、Google AIのプロダクトマネジャー、ジュリー・カットー氏が、米国海洋大気庁(NOAA)と協力して絶滅が心配されているザトウクジラの生息地域を可視化したプロジェクトを紹介。「歌うクジラ」として知られるザトウクジラの歌の録音(人が聞いたら19年かかる量)をAIで解析したんだそうです。
もう1つ、環境保護で登壇したのはGoogleのAI技術を使っているNPO、Rainforest Connectionのトファー・ホワイトCEO。
TEDでも紹介したスマホ活用の熱帯雨林での違法伐採対策システムを披露しました。森のいたるところの木に貼り付けた太陽光発電アダプタ付きの中古スマホで音を集め、トラックやチェンソーなどの機械っぽい音をAIで解析してレンジャーに通報する、というものです。ホワイトさんがカリスマ性のあるイケメンということもあり、このプロジェクトは既に結構有名です。
トリは、昨年のイベントでも進捗が紹介されていたタリン・クラヌワットさんの「くずし字」研究。早稲田と東大で「源氏物語」などの日本文学を学んだクラヌワットさん、現在は日本国立情報学研究所人文学オープンデータ共同利用センターの特認研究員として、くずし字のOCRを開発中。くずし字を認識し、今の日本語に変換する機械学習システム「KuroNet」を紹介しました。
古典籍28点の画像データから切り取ったくずし字4645文字種の字形データ68万4165文字を含む「日本古典籍くずし字データセット」は公開されています。
諸刃の剣をどう扱うか
どの発表も面白く、すごいなーと思うものばかりでした。プロジェクトに賭ける思いを熱く、あるいは静かに語るスピーカーに何度も感動しました。
Googleがこれからも意義のあるプロジェクトを探し出して、資金と技術を注ぎ込んでくれるといいなぁ、と。
いくらGoogleさんがお金持ちでも、資金には限りがあります。それをどのプロジェクトに投じるかは、先に触れた検証プロセスを経て慎重に検討しているのでしょう。Q&Aでは「どういうプロジェクトに投資するか、どうやって決めてるの?」という質問もありました。
資金には限りがあっても、技術を広く使ってもらうために、GoogleはTensorFlowを含むいろんなものをオープンソースにしています。
ただし、なんでもかんでも誰でも使えるようにしたら、悪用する人も出てきます。なので、オープンソースにするときは、とても慎重に検討しているそうです。特許をとるのも、悪用を防ぐ手立ての1つだとディーンさんは説明してました。
普段GoogleアシスタントやGoogle翻訳を使っていると、ものすごい勢いで性能が良くなっていることを実感します(翻訳なんて、学術論文であればほぼ人間レベルで翻訳してくれます。内容が理解できるかどうかはまた別の話ですが)。
こうした個人が便利だと思うことからイベントで紹介された大きな問題解決まで、AIはもう世界に深く入り込んでいます。
「気づいたらなんだか悪いことにいろいろ使われてるー」などということにならないように、AIの旗手の1つであるGoogleさんには、これからもよろしくお願いしたいところです。
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