「わざと負けようとしても無理」と話題 プロも挑戦する“世界最弱のオセロAI”、生みの親に聞く開発の裏話(2/2 ページ)
AIベンチャーのAVILENが、強化学習を使ってAIを極限まで弱くしたブラウザゲーム「最弱オセロ」をリリース。AIが対局中に「あえて角を取らない」「石を少なく取る」といった行動を取り続けるため、人間は負けることが難しいゲームだ。生みの親である吉田拓真CTOに、開発した経緯を聞いた。
全日本チャンピオンも負けられず
一般公開後は、その弱さからプロのオセロプレイヤーの間でも話題となり、海外などからも挑戦者が相次いでいる。AIが勝った回数は約3000回だが、これらは「かなり研究した有段者によるものでしょう」と吉田CTOはみている。
「私の友人にオセロの全日本チャンピオンがいるのですが、最弱オセロは彼でも10回やって1回引き分けるのがやっと。あと9回は勝っているので、負けているのはオセロ界でもトップクラスの人のはずです」
強者たちの挑戦を退けるべく、吉田CTOは現在、AIの強化学習を再開。AI同士による対戦を復活しているため、「またどんどん弱くなっています。サーバ側の処理能力に限界はありますが、本当の意味での最弱に限りなく近づいています」という。
AIに興味を持つきっかけになればうれしい
「もし資金に余裕があれば、スパコンなどを使って、判断の速度をもっと上げたいですね」と笑う吉田CTO。夢は尽きないが、最弱オセロはあくまで“遊び”の一環で開発したもの。有料化してビジネスにつなげたり、機能強化のために投資したりする予定はないという。
「本当に遊びのつもりだったので、今後は堅実に本業をやっていきますよ。でも、AlphaGoと対局できた人は一握りですが、最弱オセロでは、多くの人に強化学習を使って構築した最新のAIと対局する機会を提供できました。反響の大きさは想定外でしたが、やってよかったと思っています」と吉田CTOは話す。
「AIには『人間の仕事を奪う』といった負のイメージもありますが、最弱オセロに触れた人には『AIはいろんなことができそうだな』『使い道次第では人間の役に立ちそうだな』と思ってもらったり、AIに興味を持ってもらったりすればうれしいです。会社としてはやりませんが、時間があれば個人的に新しい仕掛けをつくるので、楽しみにしていてください」
関連記事
- 「すごくリアル」と話題――“アンドロイド演じるお姉さん”に聞く「似せる」ための苦労
企業のプロモーション動画やイベントなどで“アンドロイド役”を演じているモデルの高山沙織さん。昨年は3DCG女子高生「Saya」のコスプレ、今年4月には「不気味の谷」を再現した動画を公開し、ネット上で話題を呼んでいる。アンドロイド役を演じ続ける中で、どんな試行錯誤をしているのか。 - ディープラーニングは何ができる? エンジニア以外も知っておきたい注意点
第3次AIブームをけん引する技術である「ディープラーニング」。今回はディープラーニングを活用する上で知っておきたい基礎知識を紹介する。 - 「量子理論の副産物に過ぎなかった」──東芝の「量子コンピュータより速いアルゴリズム」誕生秘話
量子コンピュータよりも速い「シミュレーテッド分岐アルゴリズム」を開発した後藤隼人主任研究員に、開発背景を聞いた。 - 「コンピュータは星新一を超えられるか」 人工知能でショートショート自動生成、プロジェクトが始動
星新一さんのショートショートを解析し、質の高いショートショートの自動生成を目指すプロジェクトが始まった。人工知能研究の第一人者ととして知られる松原仁教授など6人がチームを組み、SF作家の瀬名秀明さんが顧問を務める。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.