「みんなAIを難しく考えすぎ」「本当に必要か考えて」 AIに振り回される会社の共通点:これからのAIの話をしよう(AI対談編)(4/4 ページ)
日本企業はAI後進国なのか?――メルカリの濱田さんとAI開発の事情に詳しいマスクド・アナライズさんのAI対談が実現。日本企業のAIをめぐる現状について議論した。
メルカリは「価値交換の在り方を変える場所」
――メルカリは、日本企業の中でもAIを自社サービスにうまく取り入れることに成功していると思っています。AI導入の勘所というか、成功のためのセンターピン(本質的なポイント)を抑えているのではないかと思うのですが。
濱田:うーん、日本ではうまくいっていると思いますが、そこで満足しているわけではありません。僕らは世界で成功したいと思っています。そのためにちゃんとサービスを作っていきたいですし、正直まだまだ課題は多いです。周りからうまくいっていると見えているのは何でしょうね。中は結構カオスですよ(笑)。まだ売ることは空気じゃないし、やれることたくさんあります。
マスクド:AIの使い方がうまいなとは思っています。これはAI、これは仕組みで解決という当てはめ方がうまいのではないでしょうか。そのバランス力がプロダクト全体の評価につながっているんだと思います。
濱田:AIのモデルは、かなり自前で作り込んでいますからね。
マスクド:大企業からの退職エントリーを書いたエンジニアが、新天地で頑張っている証拠ですね。
濱田:Airbnbは物件を持たない世界最大の宿泊施設、Uberはクルマを持たない世界最大のタクシー企業、WeWorkは物件を持たないテナントオーナー、孫さんが出資しているOYOは物件を所有しないホテルです。われわれは何かというと、世界中の使っていないモノをマッチングさせるマーケットプレイスだと思うんです。いずれのサービスも最重要課題はマッチング精度を上げること。そのためにはAIなどのテクノロジーが重要になってきます。
マスクド:欲しいものがすぐ見つかり、売りたいものがすぐ売れる――マッチング精度の高さが、サービスを使い続ける要因になりますね。「すぐ」という速さは、分かりやすいメリットですから。
濱田:メルカリはモノを売り買いする場所だと思われがちなんですが、僕らはUberやAirbnbとあまり変わらないと思っていて。テクノロジーの力を使って、価値交換の在り方を変えている企業だと思っています。
マスクド:個々人が持つ物にそれぞれ異なる価値があり、交換し合うことでよりその価値が高まる思います。それを自由にできるのがメルカリですよ。価値観がアップデートされていく面白さがありますね。
著者プロフィール:松本健太郎
株式会社デコム R&D部門マネージャー。 セイバーメトリクスなどのスポーツ分析は評判が高く、NHKに出演した経験もある。他にも政治、経済、文化などさまざまなデータをデジタル化し、分析・予測することを得意とする。 本業はインサイトを発見するためのデータアナリティクス手法を開発すること。
著者連絡先はこちら→kentaro.matsumoto@decom.org
著者より単行本発売のお知らせ
松本健太郎さんとマスクド・アナライズさんの共著「未来IT図解 これからのデータサイエンスビジネス」が発売されました。これまでは明らかにされなかった本当のデータサイエンスビジネス、今だからこそわかるデータサイエンスビジネスの話を盛り込んでいます。詳細はこちら。
関連記事
- 日本と中国、AIで明暗分かれる理由は メルカリ×マスクド・アナライズ対談
日本企業はAI後進国なのか?――メルカリの濱田さんとAI開発の事情に詳しいマスクド・アナライズさんのAI対談が実現。日本企業のAIをめぐる現状について議論した。 - なぜ日本は人工知能研究で世界に勝てないか 東大・松尾豊さんが語る“根本的な原因”
なぜ日本はAI(人工知能)の研究開発で米国や中国に勝てないのか。ディープラーニング研究の第一人者、東京大学の松尾豊特任准教授が日本の問題点を解説する。 - 人工知能開発は「儲けないと意味がない」 東大・松尾豊さんが見た“絶望と希望”
日本が人工知能開発で世界と戦う上で可能性のある分野や領域は。日本国内におけるディープラーニング研究の第一人者である東京大学の松尾豊特任准教授に聞く。 - 「日本はAI後進国」「早く自覚してほしい」 ソフトバンク孫社長が憂慮
ソフトバンクグループの孫正義社長(兼会長)が「日本はAI後進国になってしまった」と発言。「投資したくても、日本ではAI関連ユニコーン企業がまだ生まれていない」と指摘する。 - 「エンジニアじゃなくてもAIは使える」 メルカリが求めるAI人材の条件
メルカリが技術戦略発表会を開催。AIに取り組む理由と、AI人材の採用に込める思いを語った。 - AI人材の三者三様、DeNA・メルカリ・ABEJAが語る「いま欲しい人材」
優秀なAIエンジニアを抱える企業は、どのようにAI人材の獲得と育成を行っているのか。3社がイベントで議論した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.