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数ミリの腫瘍に針を刺せるロボットアーム がん治療への活用に期待

医療ロボットの開発を手掛けるROCK&LOTUSが、熟練医師でも難しいがん治療法を正確に実行できるロボット「IRIS」(アイリス)を発表。医師の治療スキルに依存しない医療行為ができ、がん治療の機会を増やせる。

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 医療ロボットの開発を手掛けるROCK&LOTUS(東京都千代田区)は9月3日、皮膚から10〜15センチほどの深さにある数ミリのがん腫瘍に針を刺し、薬剤を投与できるロボットアーム「IRIS」(アイリス)を発表した。2023年ごろの実用化を目指す。

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 IRISは、直径0.5ミリ程度の細い針を使って人体に薬剤を投与できるロボットアーム。末期がんや転移がんの治療などで活用を見込む。細い針は患者への負担が少ない反面、針が曲がりやすく、熟練医師でも正確に腫瘍を捉えて刺すのは難しい。

 IRISのアーム部分は産業用ロボットなどで使われているものと同様だが、先端に取り付けられた針のコントロールユニットは専用品を採用。針を左右に回転させると同時に微細な振動を加えることで、正確にコントロールできるという。

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末期がんに効果的な「HITV治療」での活用例を紹介

 ROCK&LOTUSは早稲田大学で開催された第37回日本ロボット学会学術講演会で、末期がんや転移がんで行われる「HITV治療」にIRISを活用する事例を紹介した。

 HITV治療は、体にとっての異物を検出して免疫細胞に攻撃命令を出す「樹状細胞」をがん腫瘍に注入する治療法。がん細胞は免疫細胞が攻撃の目印とする「MHC分子」が表れにくく、攻撃を逃れることがある。樹状細胞を腫瘍内部に注入すれば、確実に異物として認識され、異物への攻撃を行う免疫細胞「キラーT細胞」が腫瘍を攻撃しやすくなるという。

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 HITV治療は患者への負担が少なく、がんが進行している場合にも治癒率が高い手法だが、がん腫瘍に正確に針を刺し樹状細胞を注入するには医師の高度なスキルが必要だった。

 ロボットの活用で腫瘍に正確に樹状細胞を注入できるようになると、医師のスキルに依存しない医療行為ができるようになり、治療の機会を増やせるというメリットがある。CTスキャンを繰り返しながら腫瘍の位置を確認して医師が針を刺す手法に比べ、患者も医師もCTスキャンによる被ばく量を抑えられるという。今後は臨床試験を進め、23年ごろの実用化を目指す。

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