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リクナビ問題の本質を山本一郎氏・高木浩光氏らが斬る 内定辞退予測を始めた背景に「得意先からの頼み」「個人情報理解の甘さ」(1/3 ページ)

情報法制研究所(JILIS)が、リクナビ問題が起きた要因などを議論するセミナーを開催。山本一郎氏、高木浩光氏ら有識者が登壇し、各自の専門分野に基づいた意見を述べた。今回の問題を招いた背景には、顧客企業からの要望と、個人情報に対する理解の甘さがあったという。

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 「リクルートキャリアが内定辞退率の提供を始めた理由は、リクルートグループのセミナー事業に大規模な資金提供をしている企業から頼まれたからだ。(競合の)マイナビがエントリーシートを分析して内定辞退率を算出するサービスを先に始めていたこともあり、断りづらく、強いプレッシャーがあったのだろう」――。

 就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが、学生の同意を得ないまま内定辞退率の予測データを顧客企業に販売していた問題を巡って、情報法制研究所(JILIS)は9月9日、問題が起きた要因などを議論するセミナーを開催した。同所の上席研究員でブロガー・投資家の山本一郎氏が登壇し、これまで得た情報を基に、問題が起きた背景をこう説明した。

 セミナーには山本氏の他、JILISの鈴木正朝理事長、高木浩光理事、板倉陽一郎参与、京都大学大学院経済学研究科の依田高典教授、人事・労務分野を専門とする倉重公太朗弁護士が参加し、各自の専門分野に基づいた意見を述べた。

 セミナーの議論では、リクルートキャリアが今回の問題を招いた背景には、顧客企業からの要望とマイナビへの対抗心、個人情報に対する理解の甘さがあったことが浮き彫りになった。

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JILISのセミナーに登壇した有識者

「マイナビさんができるのだから、リクルートさんもできますよね」

 山本氏は上記の発言に続いて「マイナビの内定辞退率の測定精度は高く、顧客企業から『マイナビさんができるのだから、リクルートさんもできますよね?』と頼まれることもあったという」と暴露。最初に内定辞退率の提供を求めた企業は「2社ある」と話した。

 「リクルートキャリアはこうした状況下で、内定辞退率の算出を実証実験としてスタートした。だが『こんなサービスを提供していいのか』と疑問を持っていた層も社内にいたと聞いている。問題が発覚した後は、顧客企業の社名が出ているから『頼まれてやりました』とは言いづらいのだろう」と裏事情を明かした。

 ただ、顧客企業の要望を受けて始めたものの、同社は並行して自社での新規開拓も行っていた。依田氏は「実証実験といいながら、400〜500万円もらって営業するのは矛盾している。言い訳は通用しない。品性が悪い」と切り捨てた。

 倉重氏は「顧客企業の中には『リクルートキャリアにだまされた』と言っている企業もある。リクルートの営業は『(学生から)ちゃんと同意を取っているから大丈夫です』と言っており、その営業トークを真に受けたのだという。欲しいデータだったため、法務に相談しないまま進めてしまったのだろう」と指摘した。

「リクナビDMPフォロー」の仕組みとは

 登壇者が問題視しているサービスは、リクルートキャリアが提供していた「リクナビDMPフォロー」。顧客企業から就活生の個人情報を提供してもらった上で、リクルートキャリアが持つリクナビユーザーのデータと突き合わせて本人を特定し、内定辞退率を算出する仕組みだった。

 同サービスは18年2月にリリースされ、批判を受けて19年8月にサービスを廃止したが、リクルートキャリアは19年3月にサービスのスキームを変えている。

 変更前のスキームは、(1)顧客企業から、氏名やメールアドレスを伏せた形で応募者のCookie情報や企業ID(顧客企業が持つ個人情報)を提供してもらう、(2)リクナビが保有するCookie情報と突き合わせ、応募者のブラウザを特定する、(3)アクセス履歴を過去のリクナビユーザーのものと照合し、内定辞退率を0.0〜1.0のスコアで算出する――というもの。この際、算出したスコアと企業IDを照合し、個人を特定する作業は顧客企業が担っていた。

 この分析手法では、応募者が異なる端末やブラウザを使い分けている場合に動向を追い切れないことから、同社は19年3月にスキームを変更。(1)顧客企業から、応募者の個人情報(大学・学部・氏名)を提供してもらう、(2)リクナビが保有する情報と照合し、個人を特定する、(3)行動データを過去のリクナビユーザーのものと照合し、内定辞退率のスコアを算出する――という仕様に切り替えた。この際、個人を特定する作業はリクルートキャリアが担っていた。

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「リクナビDMPフォロー」のスキーム(リクルートキャリアのIR資料より)
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