リクナビ問題の本質を山本一郎氏・高木浩光氏らが斬る 内定辞退予測を始めた背景に「得意先からの頼み」「個人情報理解の甘さ」(3/3 ページ)
情報法制研究所(JILIS)が、リクナビ問題が起きた要因などを議論するセミナーを開催。山本一郎氏、高木浩光氏ら有識者が登壇し、各自の専門分野に基づいた意見を述べた。今回の問題を招いた背景には、顧客企業からの要望と、個人情報に対する理解の甘さがあったという。
プライバシー責任者は優秀な人材にフルコミットさせるべき
リクルートキャリアは今後、個人情報保護委と厚労省の指導を踏まえ、(1)リクナビが個人情報を活用する際に妥当性を検証する「プライバシー責任者」を設置する、(2)20年4月をめどにリクルートグループ各社の法務組織を統合し、法務機能を強化する、(3)全ての求人情報提供事業と職業紹介事業に職安法違反がないかを確認し、是正する――といった改善策を講じる予定だ。
この改善策について、板倉氏は「プライバシー責任者が1〜2カ月に1回のペースでは会議に来るだけでは絶対だめ。全ての案件に目を通し、あぶなっかしいものがあれば外部の有識者と議論しないといけない。相当ハイレベルな人を起用し、かなりの時間をかけて取り組むべきだ」と指摘した。
一方同氏は、21年卒向けの「リクナビ2021」のプライバシーポリシーの内容が問題発覚前と変わっておらず、登録した情報が他社の採用支援に使われないことにも触れ、「これは何なのか」と遺憾の意を示した。
医療や教育でもデータ売買が横行? 「リクナビだけで終わらせてはいけない」
こうした論点について一通り議論した後、登壇者はセミナーの終盤で「リクルートキャリアを批判するだけで、この問題を終わらせてはならない」と口をそろえて注意喚起した。
各氏によると、表ざたになっていないだけで、HR Tech(人材業界へのIT活用)はもとより、Health Tech(医療分野へのIT活用)やEd Tech(教育分野へのIT活用)といった領域では、グレーゾーンといえるデータのやりとりが横行しており、個人情報の利活用を厳しく規制する必要があるという。
山本氏は「(このままでは)この後、色んな問題が起きる。例えば、一部の人材会社は大手企業に対して『(他社の)この幹部、そろそろ退職しそうですよ』という情報提供をすることがある。『エントリーシートを書いて、色んな会社の面接を受け始めましたよ』という情報を提供することで、ヘッドハントにつなげている。いわば、生データがぐるぐる回っている状況だ。もちろん、この幹部が(個人情報の)目的外利用に同意しているはずがない」と示唆に富むコメントを残した。
関連記事
- 詳報・リクナビ問題 「内定辞退予測」なぜ始めた? 運営元社長が経緯を告白
「リクナビ」問題に揺れるリクルートキャリアが、8月26日に記者会見を開催。小林大三社長が登壇し、学生の内定辞退率を予測したデータを企業に販売していた件の背景を語った。採用担当者負担を軽減する狙いでリリースしたが、学生への配慮が不足していた他、社内のチェック体制が機能していなかったという。 - 厚労省が「リクナビ」運営元に行政指導 内定辞退予測は職安法違反
リクルートキャリアが厚生労働省から行政指導を受けた。学生の内定辞退率を予測して他社に販売するサービス「リクナビDMPフォロー」(8月4日付で廃止)が職業安定法に違反したと判断されたため。今後は再発防止に努めるとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.