Apple、Amazon、Microsoftのハードウェア戦略を俯瞰する(3/3 ページ)
3社の発表イベントを全て取材した筆者が、プラットフォーマーのハード戦略を分析。
「ソフトやサービスが差異化の源泉」Amazonのハード戦略
ではAmazonはどうか?
気がついてみれば、Amazonは「通販」「クラウド」「デバイス」という3つの柱で成り立つ会社になった。言葉は悪いが、「サービスを使い続けてもらうための撒き餌」というイメージもあった同社のデバイス事業は、着々と「アマゾンのハードウェアデバイス」というブランドに変わってきている。
なによりの特徴は「ソフトウェア・サービスドリブン」であり、「ハードウェア自体は簡素」である、ということだろう。
昨年はAlexa対応電子レンジを出したが、今年は「Alexa対応コンベクションオーブン」を出した。だがこちらも、オーブンとしては比較的シンプルな製品に、Alexa+ソフトウェア制御によって「より簡単に使える」という要素を加えていったものだ。
同様に、そうした「ソフトでハードの価値が変わる」要素を色濃く反映しているのが、新しいオーディオ機器である「Echo Studio」だ。5つのスピーカーを組み合わせ、空間オーディオを実現する製品だが、そのスピーカーのクオリティは正直「価格なり」のものだ。2万円台のオーディオ製品で、何十万円のスピーカーのような音が鳴るわけではない。だが、ソフトウェアの力で音の反響を計算して「空間」を作り上げることで、2万円台のスピーカーなのにずっと価値の高い体験を提供する。活用にはクラウドからのサービス連携が必須で、単体では意味をなさない。
まさにAmazonを体現するようなハードだ。他のハードメーカー以上に「クラウドありき」「ソフトありき」の姿勢が顕著である。
一方、Amazonの特徴は「他社を排除しない」ことにもある。自社のハードで他社のサービスを使えるようにするのだ。音楽サービスでは、SpotifyやAppleとも提携し、海外イベントなのにドコモやKDDIのサービスを紹介するほどだ。
これはおそらく、「Amazonというブランドがそこまでロイヤリティをもっていない」ことを知っているからではないか。Appleのように「自社にはロイヤリティの高いユーザーがいる」という自信があれば、自社サービスに閉じたハードウェアを作るかもしれない。だが、Amazonにはその自信がない。そして実際、ユーザーによってはその方がいい。
価値・価格で圧倒しつつ自社ブランドに依存しすぎないことこそ、Amazonという会社の価値とジレンマを示しているのではないか。他社と比較すると、そう思えてならない。
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