データサイエンティストの仕事は奪われない 「Kaggle Grandmaster」が語るデータ分析の本質(2/2 ページ)
データサイエンティスト協会のシンポジウムに、日本に10人ほどしかいないというKaggle「Grandmaster」が登壇。Kaggleで培った経験や、ビジネスでの機械学習の応用などについて語った。
2014年にKaggleを始め、19年6月にGrandmasterになった阪田さんは「Kaggle熱が高まっているのを感じます」と語った。
「一般的にKaggleが知られるようになったのはここ2年くらいで、手を動かして一定の成果を出せる人材の重要性が理解されてきたと感じます。Grandmasterになったことは社内でも大きく取り上げてもらい、データサイエンスの業務に関係ない人にも周知されましたし、データサイエンスに関する業務の相談も増えました。自分のキャリア的にも大きな意味を持っています」(阪田さん)
データサイエンティストの仕事がなくならない理由
AutoMLなどの自動化ツールによって機械学習のプロセスが自動化されると、機械学習エンジニアの仕事が奪われるのではないか――ここ最近は、こうした脅威論も散見される。こうした意見をどう受け止めているか、石原さんが2人に問いかけた。
阪田さんも小野寺さんも、「データサイエンティストの業務全体が自動化ツールで代替されるとは思えない」という意見で一致した。
阪田さんは「機械学習エンジニアの定義が曖昧ですが、データサイエンスには現場の課題を正しく理解し、それにマッチした評価指標やKPIを設定して分析にもっていくことが大事です。そうした問題設定は、実際に手を動かして勘所が分かっている人間にしかできないでしょう。データサイエンスの業務全体が置き換わることはあり得ないと思います」と主張する。
小野寺さんも「私も阪田さんと同じ考えです。そもそもモデリング自体はほぼ自動化されてますよね。それよりも社内の折衝や(稟議の承認をもらう)スタンプラリーを自動化してほしいですね」と笑う。
データサイエンティストの力量が発揮されるのは、モデリングよりもその前段の問題設定ということだ。「事業部から、こういう課題を解きたいという相談があったときに、どういう手法を使えばいいかの目利きはKaggleで養われました。古典的な手法で間に合うことも多いですからね。それは今の自分のコアな力になっています」と阪田さん。「関係部署とのコミュニケーションや会議は案外多いですし、自分の頭の中にあるものをいかに分かりやすく相手に伝えるかを考える作業はばかにできません」と強調する。
事業部が抱える課題をデータサイエンスの問題に落とし込める人材は、今後も必要とされそうだ。
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