Microsoft、Warner Bros.の映画データをガラスにレーザーで保存し、再生に成功
MicrosoftがWorner Bros.と協力し、映画「スーパーマン」の75.6Gの映像データを、コースターサイズの石英ガラス板に保存し、再生することに成功した。コールドデータの安価で高品質な保存に取り組む「Project Silica」の一環だ。
米Microsoftは米Warner Bros. Entertainment(以下、Warner Bros.)と協力し、1978年製作の映画「スーパーマン」の75.6GBもの映像データを、コースターのサイズ(75×75×2ミリ)の石英ガラス(シリカ)の板に保存し、再生することに成功した。Microsoftがフロリダ州オーランドで開催中のイベント「Microsoft Ignite 2019」で11月5日(現地時間)に発表した。
これは、Microsoft Researchが取り組んでいる、超高速レーザー光学とAI技術を用いてデータを石英ガラスに保存しようという「Project Silica」の初の実証テストだ。このプロジェクトは、「コールドデータ」(頻繁にアクセスはしないが、非常に貴重で保存しておかなければならない、医療データや金融データなど)の保存方法の開発を目的としている。
大まかな仕組みは、赤外線レーザーで「voxel」と呼ぶ3次元ピクセルにエンコードしたデータを石英ガラスに刻み込む。厚さ2ミリのガラスに、100層以上のvoxelを保存できる。これを読み出すためには、機械学習アルゴリズムで、ガラスを通して輝く偏光のパターンをデコードする。
石英ガラスは丈夫なので、「何世紀にもわたってデータを保存できる」という。Microsoftはスーパーマンを保存した石英ガラスを熱湯に入れたり、スチールウールでこすったり、電子レンジで加熱したりしたが、データは無事に再生できた。
現在のデータセンターで使っているHDDは3〜5年で使えなくなり、磁気テープでも5〜7年しかもたない。また、適度な空調が必要だ。だが、石英であれば、その必要もない。
Warner Bros.は映画とテレビ番組で約100年の歴史を持ち、膨大な量のコンテンツを保管している。ネガフィルムは適切な状態で保管すれば何世紀も維持できるが、テレビ番組のデータなどは長く保存できないため、アーカイブ方法を模索しており、Microsoftのプロジェクトに関心を寄せた。
石英ガラスへのコンテンツ保存技術はまだ開発段階で、現行のアーカイブ方法の安価で高品質な代替手段にするにはまだ時間が必要だ。課題は、データの書き込み・読み取り速度と密度の改善だ。Warner Bros.はデータ読み取りの独自インフラを構想している。
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