バイオ3Dプリンタで作った人工血管を移植する臨床研究、佐賀大学などの研究グループが開始
佐賀大学と再生医療ベンチャーのサイフューズは、独自開発のバイオ3Dプリンタで細胞製人工血管を作り、ヒトへ移植する臨床研究を開始すると発表した。
佐賀大学と再生医療ベンチャーのサイフューズ(東京都文京区)は11月12日、独自開発のバイオ3Dプリンタで細胞製人工血管を作り、ヒトへ移植する臨床研究を開始すると発表した。人工透析を必要とする患者に移植し、安全性の高いバスキュラーアクセス(血液の出入口)を作るという。
腎不全などで人工透析が必要になった患者の多くはバスキュラーアクセスとして「動静脈内シャント」(動脈と静脈を連結し、透析時に血液量を確保する)を使用している。作製には自身の血管を使うのが一般的だが、難しいときは合成繊維や樹脂で作った小口径の人工血管を用いる。ただし、人工血管は感染の危険性や閉塞(詰まりやすい)といった問題も抱えている。
今回の臨床研究では、人工透析が必要な患者から皮膚組織を採取し、クリーンルームで拡大培養。できた細胞塊をサイフューズと再生医療システムの開発を手掛ける澁谷工業(石川県金沢市)が共同開発したバイオ3Dプリンタ「Regenova」でチューブ状にプリント、細胞製人工血管を作成する。細胞製人工血管は、抗感染性や抗血栓性に優れる他、透析に関わる患者の苦痛を軽減することも期待されている。
バイオ3Dプリンタは世界中で100以上の企業や研究者グループが開発しているが、細胞だけで立体構造体を作るのは難しく、足場となるポリマーやハイドロゲルといった生体材料を混ぜるのが普通だ。佐賀大学では「外科的操作に耐えられる強度を持つ細胞構造体をプリントできるものは、当研究グループが開発した装置のみ」としている(19年11月時点)。
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