YouTube、ハラスメントに関するポリシーを強化し、個人攻撃すれば有名人でも動画削除の対象に
6月に、差別的な動画を放置したとして非難されたYouTubeが、「嫌がらせやネットいじめに関するポリシー」を更新し、人種、性別、性的指向などで個人を攻撃するコンテンツは投稿者が誰であれ許可しないようになる。
米Google傘下のYouTubeは12月11日(現地時間)、「嫌がらせやネットいじめに関するポリシー」を更新したと発表した。個人攻撃をするような動画やチャンネルの取り締まりが強化された。
YouTubeは6月、極右の人気YouTuber、スティーブン・クラウダー氏が自身のチャンネルで、同性愛者のジャーナリスト、カルロス・マザ氏を個人攻撃する複数の動画を投稿したが、これらの動画は「ポリシー違反ではない」として削除しなかったことで非難された。同社はこの段階でコミュニティガイドラインを改定したが、クラウダー氏の動画は削除しなかった。
嫌がらせやネットいじめに関する今回のポリシーの改定で、4つの変更が加えられた。
まず、削除対処とする動画のタイプを拡大した。従来YouTubeは、「おまえを殺してやる」というような直接的な脅ししか削除しなかったが、潜在的だったり暗示的だったりする脅しも削除する。The Vergeによると、YouTubeは例えば誰かを話題にしながら武器を振り回したり、暴力的なゲームのシーンで殺される人の顔に誰かの顔を貼り付けることなどだと説明した。
次に、動画単体ではポリシー違反と言えなくても、複数の動画やコメントにまたがって行う嫌がらせをするチャンネルに厳しく対処する。そのためにYouTubeパートナープログラム(YPP)のポリシーも強化し、こうした嫌がらせを繰り返すチャンネルはYPPから除外され、YouTubeで収益を上げられなくなる。これは、クラウダー氏のケースに当てはまりそうだ。
3つ目は、人種、性別、性的指向などの保護対象グループの属性に基づいて悪意を持って侮辱するようなコンテンツが許可されなくなる。これは、個人でも人気YouTuberでも著名人でもすべてのユーザーに適用する。
4つ目は、上記の変更をコメントにも適用し、また、クリエイターが自分のチャンネルに投稿されたコメントを公開前にレビューするオプションを提供する。この機能は現在、ほとんどのクリエイターが利用できるようになっている。
YouTubeは公式ブログで、「われわれは、プラットフォームとしてのオープン性と活発な議論が続けられることに今後もコミットしていく。だが、嫌がらせを容認することはない」と語った。
クラウダー氏はこのポリシー変更について自身のチャンネルで「緊急。YouTubeの“粛清”が始まる」という動画を公開し、この動きを批判した。一方、マザ氏はTwitterで、「YouTubeは曖昧なコンテンツポリシーを展開することでPR的な危機を管理するのが大好きだ」とツイートし、ポリシーは改訂しても、それを適用するかどうかはYouTube次第で、人気YouTuberを対象とするかどうかは疑問だとしている。
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