AIブームが収束し、怪しいAIベンチャーが消えた年――2019年を“AI本音対談”で振り返る:これからのAIの話をしよう(2019年振り返り編)(4/4 ページ)
2019年はAI業界にとってどんな1年だったのか? データサイエンティストの松本健太郎さんと、AI事情に詳しいマスクド・アナライズさんが振り返る。
「AIが仕事を奪う論」の行方
マスクド:「AIが仕事を奪う論」についても、だいぶ落ち着いてきましたね。
松本:オズボーン博士が書いた論文が発端になった議論ですね。去年の4月にオズボーン論文への反論記事を書いているのですが、私は「タスクが自動化されても仕事自体はほとんどなくならない」と考えています。ヨーロッパ経済研究センターが指摘していますが、オズボーン論文ではtaskとjobが混同されている。
マスクド:AIが普及することでデータサイエンティストの仕事が奪われるという議論もありますね。それを含めて、将来のキャリアに不安を抱える人もいるでしょう。
松本:今年はドワンゴが人工知能研究所が閉所したことも話題になりました。優秀な研究者や開発者の方はどこに行ってもやっていけるでしょうが。
マスクド:私も“自称”AIベンチャーをクビになり、Twitterの転職活動で26社からお声がけいただきました。最終的に独立の道を選びましたが、今でも各社との関係は良好で、イベントにも登壇させてもらってます。
松本:データサイエンティストなどの新しいキャリアは先が見えないデメリットがありながら、未知の仕事を体験できるというメリットがあります。私自身もそうですが、皆さんがそれぞれ道を開拓する気概が必要なのかもしれません。
マスクド:そうですね、キャリア論は最終的に「自分で道を作るしかない」としか言えないでしょう。勉強とアウトプットを続けるしかないですし、そういう人は世間でも評価が高まります。それでもキャリアが描きやすいメガベンチャーなどに目が向きがちですよね。
松本:落合博満さんがかつてプロ野球選手として初めて年俸1億円プレーヤーになったように、2020年はデータサイエンティストやAIエンジニアのトッププレイヤーがどんどん出てきてほしいです。夢のある職業だと思われれば、データサイエンティストを目指そうとする人も増えるでしょう。そして、大企業の中で不満を抱えているエンジニアの方がいたら、ぜひ外の世界に出てほしいなと。月並みな意見ですが、世界は広いです。皆さんが戦うべき相手は社内の政治ではなく、世界のエンジニアなのではないかと思っているので。
マスクド:その通りだと思います。期待したいですね。
何が起こるか分からない2020年代に向けて
対談で話したように、AI業界は変化のスピードが目まぐるしく、数年後どうなっているか想像するのも難しいほどです。私の連載の中でもさまざまな領域でAIを活用する専門家の方にインタビューをしてきましたが、1年後にはさらに画期的な事例が出てくるかもしれません。
来年も、AIに関わるビジネスパーソンや研究者の方に取材を重ね、研究やビジネス活用の最前線についてお伝えしていきたいと思います。
著者プロフィール:松本健太郎
株式会社デコム R&D部門マネージャー。 セイバーメトリクスなどのスポーツ分析は評判が高く、NHKに出演した経験もある。他にも政治、経済、文化などさまざまなデータをデジタル化し、分析・予測することを得意とする。 本業はインサイトを発見するためのデータアナリティクス手法を開発すること。
著者連絡先はこちら→kentaro.matsumoto@decom.org
著者より単行本発売のお知らせ
松本健太郎さんとマスクド・アナライズさんの共著「未来IT図解 これからのデータサイエンスビジネス」が発売されました。これまでは明らかにされなかった本当のデータサイエンスビジネス、今だからこそわかるデータサイエンスビジネスの話を盛り込んでいます。詳細はこちら。
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