一体型スマートグラスは時期尚早。注目は「情報系」や「音のAR」か
では、2020年にスマホARから「ARを搭載したスマートグラス」へと一気に市場が動くのか、というと、それは時期尚早である。
確かにnrealやMagic Leapのように先駆的なデバイスを提供している企業は、2020年以降に向けてコンシューマ向け製品を出してくるだろう。だが、理想的ARデバイスをいきなり「完結したメガネの形」にするのはまだ難しい。消費電力を考えると、CPUやGPUの載った別のボティを用意するか、スマホをつないで使うのが現実的である。
2019年現在、最も完成度の高いAR機器はMicrosoftの「HoloLens 2」であるが、こちらも一体型を守るために様々なトレードオフを行っている。そして、コストの問題で質を下げないよう、まずは企業市場に向けた高価な(38万3800円)デバイスとしている。
Appleなども魔法を持っているわけではないので、この状況を2020年にひっくり返すのは難しい。2019年にHoloLens 2が「企業向け」として提供され、nrealやMagic Leapのデバイスが開発者向けの提供に限られている、という傾向は、多少緩和されるだろうが、2020年も継続しそうだ。
一方、2019年に明確になってきたのは「情報系スマートグラス」の復権と、「音のAR」の価値だ。
情報系スマートグラスとは、メッセージの回答や地図のナビなどの情報を単に表示するもので、いわゆるARとはちょっと違う。2012年に話題になったGoogle Glassの復活版のような趣がある。だが、メガネ側に過大なハードウェアを搭載する必要がなく、作りやすいのがポイント。カナダのNorthが作っている「Focals」などが代表例で、2019年には同社がかなり積極的にイベント出店などした結果、目立ったイメージがある。Boschがこの種のデバイスに向けたソリューションを2020年のCESに展示すると告知しており、Northも「Focals 2.0」を2020年に出荷すると発表済みだ。できることに限りはあるので過大な期待は禁物だが、注目しておく必要はある。
音のARは、その名の通り、映像でなく音で「その場にあった情報を出す」もの。ソニーの「WF-1000XM3」やアップルの「AirPods Pro」のような完全ワイヤレス型ヘッドフォンは、スマートフォンと組み合わせることでその端末になり得る。また、Boseが日本でも秋に発売した「Bose Frames」、Amazonが9月に発表し、今後アメリカでの発売を予定している「Echo Frame」などのメガネ・サングラス型デバイスにマイクとスピーカーを組み込んだデバイスもある。
本命のスマートグラスより先に、こうした簡易的なデバイスが先に注目される可能性は高いと見ている。
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