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ソニーが8Kテレビを日本でも発売へ 完全ワイヤレスイヤフォンへの投資も強化CES 2020

ソニーは、好調のテレビ事業で引き続きプレミアム路線に注力しつつ、「莫大な伸びを示している」という完全ワイヤレスイヤフォンへの投資を強化する。「CES 2020」で、ソニーホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ社長の高木一郎氏が取材に応じた。

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 ソニーは、好調のテレビ事業で引き続きプレミアム路線に注力しつつ、「莫大な伸びを示している」という完全ワイヤレスイヤフォンへの投資を強化する。独自開発のLSIで製品に磨きをかける考えだ。米国ラスベガスで開催された「CES 2020」で、ソニーホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ社長の高木一郎氏が取材に応じ、今後の方針について語った。


ソニーホームエンタテインメント&サウンドプロダクツの高木一郎社長

 まず「ソニーのエレキ復活」の象徴でもあったテレビ事業。近年、ラインアップを高付加価値製品に絞り込み、流通とマーケティングを強化することで見事に黒字化を果たした。収益の中心は米国や中国のプレミアムマーケット。具体的には、75インチ以上の大画面テレビだという。

 しかし高木氏は慎重だ。「米中の大画面テレビは価格の下落が続いており、今年はかなり厳しくなる。原因は、中国の液晶パネルベンダーが10.5世代ラインを立ち上げたこと。このクラスの価格が下がり始めると、米中のテレビ市場は非常に厳しい」という。

 大きなマザーガラスを使う10.5世代ラインでは、75インチのパネルが効率良く生産できる。パネルの供給が増え、部材の価格が下がると、次第に製品価格も下がってくる。

 米国では高級AV機器チェーンのマグノリアで高いシェアを引き続き維持しており、市場は小さくても安定して収益を上げている。高木氏は価格競争が始まるとみている75インチクラスの4Kテレビに加え、80インチ以上の8Kテレビも注力することで、20〜21年も引き続き収益性の高いビジネスを展開する考え。全体では黒字を維持する見込みだという。

 「8Kの良さが生きるのは80インチ以上だと考えている。(8Kにすると)奥行き感など画質は確実に高められるが、それも違いが分かるサイズでの話。画質を追求するメーカーとして引き続き最高の8Kテレビを提供していくが、80インチ以下なら4Kの方が製品としてのバランスを整えやすい」


CES 2020のソニーブースでは、海外向けラインアップとなる8K液晶テレビ「Z8H」シリーズ、4K有機ELテレビ「A8H」シリーズを初めて披露した

 日本市場については、「昨年は(消費増税に伴う駆け込み需要で)たくさんのテレビが売れたが、これは利益の先食いでしかない」とまた慎重な構え。ただし、8Kテレビの国内展開について尋ねると「今年は出さない方が不自然だ」と発売を明言した。

ワイヤレスオーディオは「宝の山」

 オーディオ事業に関しては、立体音響技術「360 Reality Audio」など複数の領域で投資を進める。CESで披露したコンセプトカー「Vision-S」には車載向け360 Reality Audioシステムを搭載して注目を集めた。「車内のエンターテインメント空間の演出全体に取り組んで行く。サプライヤーとして自動車メーカーに食い込んで行くのは3〜4年先になるだろうが、車載オーディオは将来も廃れない。継続的に取り組む」

 高木氏が頬を緩めたのは、ワイヤレスオーディオ市場の活況について話が及んだときだ。「成長領域としてもっとも近くに見えているのはワイヤレスヘッドフォン。近年、急拡大したが、まだまだ莫大な伸びを見せている。宝の山だ」と意気込む。アップルの「AirPods Pro」が世界的な大ヒット製品になるなど、競争環境は激しくなっているが、それ以上に市場が伸びているという。

 「確かにライバルは出てきているが、勝ち抜いていく。オーディオ製品は機能、性能も重要だが、最終的には“鼓膜をどう震わせるか”。最後の部分はアナログ勝負だ。アナログ技術で差異化できる高付加価値製品に力を入れていく」(高木氏)

 完全ワイヤレスイヤフォンやノイズキャンセリングヘッドフォンは米Qualcommや台湾Realtekの汎用チップセットを採用する製品が多いが、ソニーは引き続き自社でキーデバイスを開発し、競争力の源泉とする考え。それはテレビの映像エンジン(画質用LSI)などに近い戦略だ。高木氏は「ワイヤレスヘッドフォン、イヤフォンの領域でも半導体に投資し、他社とは違う価値を生み出していく」としている。

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