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リストバンドは“魔法の鍵”──ウェアラブル端末が変える、テーマパークの姿テック・イン・ワンダーランド(1/4 ページ)

USJが新エリア「SUPER NINTENDO WORLD」に、スマホ連携するリストバンドを導入すると発表しました。こうしたウェアラブル端末の導入は、テーマパークをどう変えるのか。ディズニーの先行事例から探っていきましょう。

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 大阪のテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」が1月、2020年夏までに開業予定の新エリア「SUPER NINTENDO WORLD」の最新情報を発表しました。詳しいオープン時期やアトラクションの詳細は語られなかったものの、アトラクション単体ではなく、エリア全体で没入感を作り出す“Immersive”(イマーシブ)な手法が取られ、同時に公開された動画は見るだけでもワクワクする作りになっています。

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2017年に開催された起工式では、ユニバーサル・パークス&リゾーツのトップが「没入感」という言葉を多用していたのが印象的でした(=写真は公式動画より)

 この発表での目玉は、スマートフォン連携のリストバンド「パワーアップバンド」だったのではないかと思います。来園者はパワーアップバンドを装着して園内を散策し、マリオのゲームと同じように実際にコインを集められるといいます。

 ユニバーサル・スタジオのテーマパークでは、これまでも現実世界とテーマエリアとの垣根を取り払い没入感を生み出す手法として、インタラクティブなアイテムが用いられてきました。ハリー・ポッターをテーマにしたエリアでは、魔法のつえを特定の振り方で動かすと、ショーウインドーやエリアの小道具を“魔法で”動かすことができるという、インタラクティブ・ワンド(ワンド・マジック)を販売しています。

ユニバーサル・オーランド(フロリダ)のハリー・ポッター“インタラクティブ・ワンド”

 このように来園者がアイテムを通じ、インタラクティブにテーマエリアそのものとやりとりできるという体験は、まさに魔法を実現するかのような技術です。ウェアラブルデバイスは、ユニバーサル・スタジオに限らず、テーマパークの体験をどう変えているのでしょうか。ユニバーサル・オーランドのライバルであるウォルト・ディズニー・ワールドの先行事例から探っていきましょう。

連載:テック・イン・ワンダーランド

老若男女の笑顔があふれるテーマパーク。その裏側には、AR/VR、ビッグデータ分析など来園者をもてなす最新テクノロジーの数々が隠れています。人々を魅了するエンターテインメントは、どのようにして創られているのでしょうか。宮田健氏が解説します。

著者紹介:宮田健(みやた・たけし)

ITセキュリティに関するフリーライターとして活動する傍ら、“広義のディズニー”を取り上げるWebサイト「dpost.jp」を1996年ごろから運営中。パークやキャラクターだけではない、オールディズニーが大好物。ポッドキャスト「田組fm」も、SpotifyやApple Podcastで配信中。

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ウォルト・ディズニー・ワールドにおける「鍵」、ウェアラブルデバイスのマジックバンド

 日米問わず、ほとんどのホテルの部屋の鍵はシリンダー錠ではなくカードキーになっているかと思います。フロリダのウォルト・ディズニー・ワールドも例外ではなく、数十年前からカードキーを使ってきました。ウォルト・ディズニー・ワールドのリゾートステイは米国人にとっても一大バケーションですので、宿泊は10日以上、それもほとんどの時間をウォルト・ディズニー・ワールド内で過ごすという家族もいます。リゾートを楽しみに来た家族はそれぞれテーマパークのチケットを持ち、食事やグッズ購入もします。

 そこでウォルト・ディズニー・ワールドでは、ルームキー、入園パスポート、エリア内決済手段を1枚のカードに集約し、園内の広大な敷地の中にいる限り、そのカード1枚で全てのことが可能になるようにしていました。これが、数十年前のお話しです。

 それだけであれば、おそらくどのテーマパークも同様のことをしていたでしょう。ここから大きく変化したのは2013年。ウォルト・ディズニー・ワールドがカードからバンドに移行しました。これが「マジックバンド」です。

 マジックバンドとは、カードの機能を腕輪として提供するもの。ウォルト・ディズニー・ワールド内のディズニー公式ホテルと、一部の提携ホテルに宿泊することで一人に一つずつ“無料で”配布されます(もちろん、宿泊費に含まれるという意味ですが)。これは従来のカードキー同様、入園のためのチケット、ホテルの部屋の鍵、そして登録されたクレジットカードによる決済機能を備えています。

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ウォルト・ディズニー・ワールドでは、入園ゲートは非常に開放的。自動改札的なゲートではなく読み取りデバイスがあるだけ
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入園時には左側のミッキーマークにマジックバンドをタッチし、場合によっては指紋認証も併用する(この時はカードで試しています)
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各レストランやショップのレジには、マジックバンド対応の読み取り機を設置。金額によってはあらかじめ設定したPINコードを入力します

 では、これまでのカードキーとは何が違うのでしょうか。このマジックバンドの重要なポイントは、遠隔センシングが可能な点と、バックエンドのシステムと連携し、登録アカウントとのひも付けが可能な点です。

アトラクションに乗ったら、自分の名前が表示された!

 ウェアラブルデバイスがどうして“魔法”に化けるのでしょうか? 実際にマジックバンドの実用例を紹介しましょう。

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