「Box」vs.「Dropbox」――独立系クラウドストレージの覇権争いはどうなる? 機能の進化から戦略を読み解く(1/3 ページ)
独立系クラウドストレージとして、国内外で多くのユーザーを抱える「Box」と「Dropbox」。両社にはどのような強みと弱みがあり、互いに勝つためにはどんな取り組みが必要なのか。近年の機能追加をもとに、両社の戦略と展望を読み解く。
クラウドストレージの「Box」を採用する企業が国内外で増えている。グローバルの顧客企業数は9万5000社を超え、米国の企業番付「Fortune 500」の69%がBoxを導入している。日本での顧客数は6000を超えており、株式市場の代表的な指標である「日経225」に含まれる企業の50%がBoxの顧客企業だ。さらに、東京証券取引所に上場している企業の中からITを積極活用している会社を選んだ「攻めのIT経営銘柄2019」の65%がBoxを使っている。
大手企業からアプローチするBox、コンシューマーから企業へ攻めるDropbox
提供元の米Boxは当初から、エンタープライズ用途の大手企業をターゲットとしてきた。個人のBoxユーザーがいないわけではないが、ビジネスとしてその領域にはフォーカスしていない。まず各業界の大手企業をターゲットとし、その実績を元に、公共機関や中小規模の企業に拡大するのが同社の戦略だ。
ただ、Boxの顧客企業数は伸びているとはいえ、同じ独立系クラウドストレージの「Dropbox」よりはまだ少ない。Dropboxは個人ユーザーから市場を開拓し、徐々に企業ユースに向かってきた。そんな同ツールは現在、グローバルの45万超の組織で利用されている。
先行するDropboxと、急成長を遂げているBox。エンタープライズを主なターゲットとする両社は、全く逆の方向からB2B市場にアプローチしてきたわけだ。両社の現在の方向性にはどんな違いがあるのだろうか。近年の機能追加を踏まえながら、互いの戦略を詳しくみていこう。
“コンテンツ管理プラットフォーム”目指すBox
Boxは現在、顧客企業のさらなる獲得に向け、単なるクラウドストレージにとどまるのではなく、エンタープライズ向けのコンテンツ管理プラットフォームになることを目指している。その一環で、契約書や稟議書などのコンテンツを社内外で共有しながら、ビジネスプロセスをスムーズに進められるワークフロー(稟議などの申請・決裁)機能「Box Relay」などを自社開発してきた。外部ツールとの連携も積極的に進めており、オープンなAPIも公開している。
Boxのいう他社ツールとの連携とは、単にアプリを切り替える手間を省くことではない。SlackやZoomなどとは、APIでの連携はもちろん、開発レベルで密に協業して互いのサービスを融合させている。具体的には、BoxとSlackを連携させると、トークルームの参加者にBox内のファイルを共有できる他、権限に応じた閲覧・編集が可能になる。Zoomと連携させると、ビデオ会議中にコンテンツを共有できる機能や、リアルタイムで議事録を作成・保存できる機能を使える。
CRM(顧客管理システム)の「Salesforce」や、米Microsoftのファイル共有ツール「SharePoint」とも連携し、両ツールからBox内のコンテンツにアクセスできるようにしている。
【修正履歴:2020年3月2日午後0時40分 Boxと他社サービスの連携について、一部事実と異なる箇所がございました。お詫びして訂正いたします】
Boxではこの他、米Adobe Systems、米Oracle、米IBMといったB2B市場で実績ある企業とも密な協業を行っている。2019年10月にサンフランシスコで開催された年次カンファレンス「BoxWorks 2019」の基調講演では、IBMのジニー・ロメッティCEO(最高経営責任者)がゲストとして登壇し、Boxのアーロン・レヴィーCEOと対談している。
その中でロメッティCEOは、「企業の働き方改革にBoxが大きな影響を与えている」と発言。それを受けレヴィーCEOは、データガバナンス、データコンプライアンスをIBMと一緒に考えていくとし、パートナーシップの重要性を強調していた。
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